過去最低でも国民の自由な選択を尊重。フィンランドの出生事情

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フィンランドの2015年の人気名前ランキングTOP3は、男児が「Leo(レオ)」「Elias(エリアス)」「Onni(オンニ)」、女児が「Venla(ベンラ)」「Sofia(ソフィア)」「Aada(アーダ)」でした。Photo by Vau.fi

長い夏休みが終わり、ようやく普段の生活に戻り始めたフィンランド。今年は、日本の梅雨のようにジメジメとした日が多く、北欧らしい爽やかさが恋しい夏休みでした。

さて先日、フィンランド国内の女性の出生率や初産年齢についての最新の統計が発表されました。ネウボラなどの育児支援制度が充実しているフィンランドですが、出生事情などはどのようになっているのでしょうか。今回はその内容についてお伝えします。

過去最低でも平均2人

今年上半期の出世数が前年より900人ほど減少し、およそ2万6千人となりました。従来なら出産ブーム時期である3月から4月にかけて出生数が増えるところ、今年は例年より少なく、このペースでいくと今年の出生数が過去最低になる可能性があると伝えられています。

ここで2006年から2015年のフィンランドの出生事情を平均的な数字でみてみますと、

10年間の平均
◯出生数:53,887人
◯出生率:1.8人
◯出産年齢:30.24歳
◯初産年齢:28.37歳

となっています。日本と比べて出生数がぐっと少ないのは、人口比が約20分の1なので比較対象にはなりませんが、初産も含めた平均年齢は日本とほぼ変わらない状況だと思います。出生率はやはり高いですね。普段の生活の中で遭遇する子連れはほとんど2人です。3人、4人も珍しくなく、さらに日本の団塊世代ぐらいになると、5、6人が平均だと言われていて、これは世界共通だと思われます。

子どもの数が多い点だけを取り上げてみると、実は離婚率に少し関係してきます。フィンランドの離婚率は、既婚女性の30〜34歳でおよそ28%、40〜44歳で25%とかなり高い比率です。再婚してからもう1人、2人、と子どもを産む女性も多いと聞きます。離婚後、父親母親どちらが親権を持つかにもよりますが、再婚同士で子連れとなると、5〜6人の子どもがいる家庭も少なくありません。もちろん初婚同士で多産の家庭もいます。

ところでこの10年間で比較的に出生数が多かったのは、2009年と2010年でした。それぞれ6万人強の新生児が生まれた背景には、2008年あたりの不景気の影響が出る直前で、まだ社会福祉制度にも充実度があったようです。その後、育児休暇の補助金や子ども手当金などに少しずつ減額などの影響が出始め、昨年2015年の出生数はおよそ5万5千人へ減少しました。そして今年の上半期の出生数から、今年は恐らくその人数を下回り、過去最低になる可能性があると予測されています。

増え続ける高齢出産

もうひとつ発表された統計結果で興味深かったのは、初産の平均年齢が年々上がり、とくに都市部のヘルシンキではおよそ34歳でした。過去の年齢と比較してみると、例えば1987年のヘルシンキの初産の平均年齢が25〜29歳だったのが、2015年では30〜34歳へ上昇しています。

いくつかの要因が考えられているようですが、やはり日本の状況と同じく仕事などのステータスを確立してから子どもを持つと考える人や、昨今の不景気から先行き不透明の状態で子どもを持つタイミングを遅らせると考える人が多いと推測されています。育児制度が充実していても、やはり人間一人を育てるには経済的な負担がかかるのはどこの国も同じ。ましてやフィンランドはここ数年の不景気からまだ脱出できておらず、出生数も初産年齢もそれが大きく影響しているようです。

産むか産まないかは国民の自由

フィンランドも日本と同じく少子高齢化、しかもEU諸国の中では近い将来一番に高齢化が訪れる国とも言われているほどの状況ですが、少子化においての目立った対策などはありません。出生数や出生率の減少、そして初産の年齢上昇で、国や政府がなにか国民へ促すことは全くないのです。出生状況を統計として国が把握するのは当然ですが、その結果に対して何か施すことはせず、どんな状況の国民でも子を産むことができ、育てられる環境や制度を整備することが国の責務と考えられているようです。そうした環境下で出生数が減った、初産年齢が上がった、というのは国民の自由な選択の結果であるため、原因や背景を特定するのが難しいと、社会保険庁の担当者が話していました。

仕事と育児、そして家庭の両立とも言われるこの時代。女性にとって妊娠出産は人生で一大事なこと。その産みどきを自分の身体やこころと相談しながら考えていきますが、並行して国が女性に対してどんな時でも安心して産み育てる環境をつくることが求められていると思います。またフィンランドでは養子や婚外子などの制度が充実しています。それもやはり子どもを望むすべての国民にどんな形でも子どもを産み育てることを自由な選択として取り入れられるように、こうした選択肢を多く用意することが小国家の生き残りをかけた対策だと思います。

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Kokoomus(国民連合党)の現内務大臣であるPaula Risikko(パウラ・リシッコ)氏は、2006年に中国から女児の養子を迎え入れています。Photo by mtv.fi

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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