社会をちょっとでもオモシロク! ギリギリアウトを狙って「生きやすさ」を拡大|NPO法人スウィング

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第29 回目はNPO法人スウィング代表の木ノ戸昌幸さんにお話を聞きました。

NPO法人スウィングについて教えてください。

スウィングは、障がいのある人、ない人がともに働くNPO法人です。障害福祉の殻をやぶり、障がいのあるなしを超えて、世の中が今よりほんのちょっとでも楽しいコトになればと願うNPOとして、さまざまな活動をしています。具体的には、次の4つの活動が柱となっています。

1つ目は京都市内各所をピカピカにする清掃部隊「THE CLEANGERS」、2つ目は京都銘菓・八ッ橋の箱(紙器)を組み立てる「shiki OLIOLI」、3つ目は絵や詩の芸術創作活動「オレたちひょうげん族」、4つ目は人の「働き」を「人や社会に働きかけること」と捉え直した対価度外視の諸活動「OYSS!」です。

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スウィングとメンバーのみなさん

なぜ、このような活動をされようと思ったのか、きっかけを教えてください。

個人的な話になりますが、僕は10歳の頃から学校への「行きづらさ」を感じはじめ、中学生の頃には「この社会は豊かと言われているけど、一体どこが豊かなんだろう」と考えはじめ、「いい大学に入って、それからいい会社に就職!」みたいな価値観にはすっかり興味が持てなくなっていました。そして25歳の頃、友人に「毎日笑えるよ」と障害福祉の世界をすすめられ、「毎日笑えるなら素敵だな!」と、その言葉だけを頼りにこの業界に飛び込みました。

僕たちの使命を「市民が市民の手により社会をより良くしていくこと」、社会福祉施設の使命を「社会を幸せに豊かにしていくこと」と考えており、この2つはほぼ同義です。ですので、NPO法人として、また社会福祉施設として、この社会をほんのちょっとでもオモシロクしていきたい!とシンプルに考え続けるうち、徐々にさまざまな活動が生まれ、広がりを持ってきました。その背景には、「効率」や「生産性」ばかりを追い求め、あまりにも狭量な価値観や固定観念に縛られたこの社会の「生きづらさ」を緩めていきたいという思いがあります。

ご活動の中の 「OYSS!(オイッス!)」は「おもしろいこと、役に立つこと、したり、しなかったり」の略だそうですが、 このスタンスこそがスウィングに参加するみなさんの気張りすぎない、いい空気感を作っているのではないかと思います。でも、一般的には「〇〇しよう」「〇〇できるようになろう」と目標を掲げることも多いと思うのですが、一見、ゆるめのスタンスにしたのはなぜでしょうか。

目標なんていらない! と思っています。目標なんかなくても生きていけるし、むしろ「目標を持たなければ」とか「目標を達成しないと」といった思いが「足かせ」になって、過剰にしんどさを感じている人がとっても多いなあと思ってるんです。人がその人本来の力や表現を発揮するには目標を掲げて力むことではなく、むしろ「脱力」が必要だと感じています。

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八ツ橋の箱を折り折りしているところ。

「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」はどんな活動をするのでしょうか。また、活動の中で登場する「ゴミブルー」は複数人いると思うのですが、よくある戦隊もののようにレッドやイエローは作らず、なぜみんなゴミブルー(同じブルー)にしたのでしょうか。

「OYSS!」の中心的活動に、毎月第3水曜日に実施している「ゴミコロリ」という清掃活動があります。「ゴミコロリ」は2008年10月からスタートし、毎月地道に積み上げてきたその回数は「109回」(2017年12月1日現在)にのぼります。スウィングの拠点がある京都・上賀茂地域のゴミ退治を20~30人で行うのですが、この活動の広報部隊としてスウィングが勝手に生み出したローカルヒーローが「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」です。怪しいブルーのスーツに身を包んで地域に姿を出すことは勇気も要りましたし、かつては不審者通報されて警察に取り囲まれたりもしました。が、今ではすっかり認知度が上がって交番にもコンビニにも平気で入ることができますし、近所の子どもたちにも大人気です。全員ゴミブルーにしたのは「全員ゴミブルー!」って言いたかったからですね。

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毎月第3水曜日に実施している「ゴミコロリ」

芸術創作活動「オレたちひょうげん族」はどんなきっかけで始まったのでしょうか。

スウィングでは2006年の事業開始以来、僕が愛媛県出身だったからだと思うんですが「五七五」を詠む文化があったんです。その五七五づくりがやがてもう少し長い詩作に発展していき、その文化は今でも脈々と続いています。本当にどうでもいい、くだらない詩がたくさん生まれていて痛快ですよ。

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その一方で2008年のある時、かなえさんという人が突然絵を描きはじめたんです。企業からの下請けの仕事が暇で暇で、みんなどうやって暇をつぶそうか?と悩んでいるような状況だったんで「絵を描く」という一大ブームがスウィングに巻き起こりました。でもブームはブームですから1人2人と飽きて去ってゆく。でも飽きずにいつまでも描き続ける3人の人がいた。で、そんなに絵が好きなら仕事にしてしまえ!と思って「オレたちひょうげん族」が本格的にはじまったんです。

当初3人からはじまったこの活動ですが、今ではメンバーの大半が絵を描いたり、詩を書いたり、意味の分からないモノを作ったり、何らかの表現活動に取り組んでいます。年に3回程度主催展覧会を開催したり、グッズ化して全国の雑貨店等で販売したり、さまざまに社会との接点を生み出しています。

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2017年夏に開催した展覧会「LOVE」の様子

京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」は、メンバーのQさんとXLさんの脅威のバス乗り換え知識力を活かした活動だと思うのですが、その活動のはじまりはどのようなことからだったのでしょうか。

スウィングには見学者を中心にたくさんのお客さんがいらっしゃるのですが、結構辺ぴなところにあるので、スウィングから次の場所へどうやって移動したらいいのか迷われる人も多いんですね。そんな時に誰かがネットで調べるよりも早く、的確に、記憶だけで案内をしていたのがQさんとXLさんでした。京都には観光名所も多く、公共交通網もものすごく発達しているのですが、発達しているばかりにめちゃくちゃややこしくもあります。

QさんとXLさんは京都の市街地を網の目にように走る京都市バスの系統と路線をなぜかほぼ丸暗記していているんですが、そのあまりにも無駄な力を何とか活かす方法はないだろうか?と考えた結果、2012年、京都人力交通案内は生まれました。現在は毎月1回、京都のメジャーな観光名所に足を運び、世界中の人たちに次の目的地への行き方や乗り継ぎを案内しています。

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JR京都駅前で日本語、英語にてバスの乗り換え案内をするXLさん(左)、木ノ戸さん(真ん中)、Qさん(後ろ姿)

ブログなどを読むと、スウィングメンバーのそれぞれのキャラクターがとても魅力的に伝わってきます。私はいろいろなポストを大笑いしながら読みました。発信の仕方が、とてもユニークだと思うのですが、「スウィングのことを誰かに伝える」時に心がけていることはありますか?

まだまだ世間的には、障がい者への【純粋・純朴・かわいそう・がんばっている・近寄りがたいアブナイ存在】といったさまざまな誤解、偏見があるように思います。また近年はいわゆる「障害者アート」の隆盛によって「障害者は芸術的に秀でた人」という新たな誤解、偏見が生まれつつあるようにも感じます。が、ひとりひとり、当たり前に個別なのであって、誰ひとり同じ人はおらず、何か1つの見方で包括することなんてできません。こうした根本を見失わず、「日常」に巻き起こる、シンプルにオモシロいことをありのままに伝えられるよう、意識しています。

活動をする上で大切にされている「大きく丸め込むような実践ではなく、小さくとも(できれば鋭く)、丁寧な実践」とは具体的にどういったものでしょうか。

スウィングは何ひとつ大きなことはしていません。ただ当たり前に自分たちが働く地域を綺麗にしたいと「ゴミコロリ」をはじめたり、ただ仲良くしたいなと思って毎月近所の子どもと遊ぶ時間を作ったり、これはオモシロい作品だ!と思うものをいろんな人に見てもらいたいと展覧会を開催したり。身の丈以上に大きく見せたり、ちょっと卑屈になって小さく見せる物事は「本当ではない」と思うし「灯台下暗し」になってはいけないので、いつも等身大でありたい、地道な一歩一歩の歩みにしか答えはないと思っています。

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派手に見えるけれど地道な活動が多い

もうひとつ、スウィングが謳う「ただ在ることの価値を認め合う」というのは、シンプルなことのように見えて、障がいがあってもなくても、難しいことだと思います。私たちはどうしたら実現に近づくことができるのでしょうか。

難しいです! まったくもって綺麗ごとです! けれど非営利のNPOだからこそこうした考え方をとことん大事にしたいですし、正に日々迷いながら「文化」を作り続けているという感じです。人は自分とは違う働き方、生き方、在り方を目の当たりにすると当たり前に違和感をおぼえますし、時には摩擦や軋轢が生じることもあります。が、そうした時こそチャンス!違和感や摩擦、軋轢の根本を丁寧に探っていくと実はそんなに大したことはない。大抵は自分自身の「仕事はこうあらねば」とか「人はこう生きるべきだ」とかいう、あまり根拠のない固定観念に捉えられているだけであって、明快な答えなど誰も持っていない。そしてそうした人との差異に「OK!」を出すことによって、自分自身の「OK!」の幅が広がり、生きやすくなることを経験として積み上げていくと、「まあ、それもアリなんじゃない?」という好循環が生まれていく気がしています。スウィングでは毎日2、30人の人が何らかの仕事をしているわけですが、お金になることも仕事、お金にならないことも仕事、スウィングにただ来るだけでも仕事、生きてるだけでも大仕事という価値観が根付いています。なのでそうした好循環が既に生まれやすい環境にあるとは思いますね。

活動をしてうれしいこと、活動をする際に大切にしていることや想いはありますか。

本当に些細なことにうれしがったり笑ったり、逆にイラついたりしながら日々を送ることができているのがナイスなのかなあと思っています。大切にしていることはたくさんあり過ぎて逆に伝えづらいですが、1つはスウィングの理念である「Enjoy! Open!! Swing!!!」の精神を忘れないようにしたいといつも思っています。自分を楽しませること、開くこと、変化を恐れず前へ後ろへ揺れ続けること、ですかね。もう1つは「ギリギリアウトを狙うこと」。アウトかな? セーフかな? どっちかな? くらいのラインを突き抜け続けてゆくと、世の中のOKやセーフゾーンや「生きやすさ」が拡大してゆくという考え方です。例えば最初は完全な「異物」であった「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」が町に溶け込んでいった過程というのは象徴的ですね。

今後の展望やご活動を通して、こんな社会になったらいいな、ということがありましたら、お聞かせください。

今後の展望はあまりないです! 基本的にはこれまでしてきたことを地道に丁寧に続けていくだけ。ちゃんと心に風穴を開けておけばオモシロいことは必ずやって来てくれますし、いつもそれを楽しみに待っています。なんだかとても生きづらい世の中です。杓子定規な価値観や固定観念に捉われず、もっと「自分軸」で動く人や場がもっと増えていけばいいなと思います。

読者の方へのメッセージをお願いします!

スウィングには清掃活動「ゴミコロリ」(毎月第3水曜日)や芸術創作活動「オレたちひょうげん族」の展覧会等、皆さまにご参加いただける活動、企画が(まあまあ)盛りだくさんです。情報は主にブログ「Swngy days」やFacebookを通じて発信しておりますので、ぜひぜひチェックしていただき、リアルにご参加いただければと思っています!

Take Action! 〜いま私たちにできること〜

好きなもの、嫌いなもの、できること、できないこと、やりたいこと、やりたくないこと。みんなそれぞれ違う。わかっているはずなのに、ある一定の価値観に合わせたり、「同じ」であることを求めたり。「まあ、それもアリなんじゃない」と誰かとの違いにOKを出せる人が増えれば、きっと生きやすさも増える。変化を恐れず揺れ続けるスウィング。ブログも最高です!

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林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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