地域総がかりで子どもたちを育てる「現代版てらこや」|NPO法人全国てらこやネットワーク

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第30回目はNPO法人全国てらこやネットワークの村瀬幸子さんにお話を聞きました。

ーーNPO法人てらこやネットワークの活動について教えてください。

不登校やひきこもり、いじめなど、子どもを取り巻く環境は、さまざまな問題を抱えています。そんな閉鎖的な日本の教育の状況を打破すべく、子どもが地域の大人や若者と一緒に遊び、学ぶことができる、現代版「てらこや」を設立し、地域ぐるみの教育の場を作るなど、子どもたちや日本の新しい未来を築くべく活動をしています。

「子ども、大学生などの若者、大人」の三つの世代と「学校、家庭、地域」の三つの教育現場を有機的につなぐことにより、地域で子どもたちを育てる「複眼の教育」を実現していく、「地域総がかり」での教育プロジェクトこそが「てらこや」です。

子どもたちには、多くの「感動体験」を積み重ねるとともに、自分が生きていく上で目標となるような「よき人との出会い」を積み重ねていくことが不可欠です。子どもたち一人ひとりが、「自ら気付き、考え、判断し、行動する」ことのできる大人へと成長を遂げてもらうことを目標に活動を行っています。

201802_terakoya_1.JPG

2015年度ココロオドル光明寺

――なぜ、このような活動をしようと思ったのか、きっかけを教えてください。

「不登校・ひきこもり・いじめ・自殺」などの問題を未然に食い止めるためには、家庭や学校だけではなく、地域社会も含めて複数の社会や他人とのかかわりが必要だと考えています。そこで、寺社や地域の潜在的教育力を活用しながら地域で積極的に子どもたちを育てていく環境を作り出すことを目的として、2003年4月に「鎌倉てらこや」を設立しました。「鎌倉てらこや」は、地域や社会のニーズを活かし、高い評価をいただきました。このノウハウを鎌倉だけにとどまらず日本全国に展開することとなり、全国てらこやネットワークが設立されました。

――てらこやの活動は具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

主な活動内容は、

・お寺や宗教施設を活用しての合宿事業
・地域の自然や文化を活かしたさまざまな体験プログラム(陶芸や郷土史散策体験など)
・大学生や高校生と遊び、学び、みんなで食事をいただく「てらこや食堂」
・論語の素読を行う「子ども論語塾」
・行政と連携しての学童保育へのボランティアスタッフの派遣事業
・「てらこやハウス」という子どもたちが学生スタッフと遊ぶことができる場の提供
・さまざまな宗教、宗派から日本人の宗教観や精神性を学ぶ活動
などで、地域の方々と連携をとりながら多岐にわたる活動を行っています。

201802_terakoya_2.jpg

みんなで座禅体験

――「てらこや」は、子ども、若者、大人をつないで地域で子育てをするということですが、その中で大学生などの若者は「子育て」にどのようにかかわっているのでしょうか。

私たちの活動の主体は大学生スタッフです。大人よりも年齢が近い大学生がお兄さん、お姉さんとして関わることにより、子どもたちは安心して自分の心を開き、自分が生きる身近な目標を見つけていきます。

どの事業においても、大学生はどうすれば子どもたちが成長していく過程で大切な「感動体験」を得られるか?を徹底的に考えて企画運営を行っています。大人たちは、悩む学生たちに適切なアドバイスを送るとともに、事業運営のサポートを行うという形を取っています。

子どもたちと向き合いながら事業を運営していくことで、子どもたちだけでなく、大学生や大人も、「自分直し」や「自分育て」を行っています。

201802_terakoya_3.jpg

子どもと学生と大人が一緒に学びます

――子どもたちの遊びの場「てらこやハウス」では、どんな遊びを楽しむことができますか。

「てらこやハウス」は、お寺や地域のビルオーナーが無償で貸して下さっているビルの一室などを「てらこやハウス」として運営しています。てらこやハウスによって、平日、週末など、活動日時は異なりますが、学生たちが企画をしたり、子どもたちのやりたいことを取り入れたりしながら、室内や屋外で思いっきり遊んでいます。イベントなども行いますが、どちらかというと子どもたちが学生と遊んだり、学校や自分のことをおしゃべりすることができる、そんな場であり、居場所になっていると思います。

201802_terakoya_4.JPG

大学生と一緒に遊ぶことができる場所

――てらこやは全国にどれくらいあるのでしょうか。

現在は、南は沖縄から北は北海道まで全国40ヵ所での活動がはじまっています。大学生、お寺や青年会議所などが主体となって、それぞれの地域性を活かした活動が展開され、それらの成功や失敗事例が蓄積されていることも「全国てらこやネットワーク」の大きな魅力だと思っています。

201802_terakoya_5.jpg

会津てらこや

――活動をしてうれしいことはありますか。

ボランティアとして関わっていた学生が、大学卒業後も大人スタッフとして、「てらこや」の活動実践に携わってくれていたり、直接的に関わっていなくても、「未来の社会のために何ができるか」を人生のテーマとして掲げ、ソーシャルビジネスを興したOBや、教員や保育士、幼稚園教諭になったOBがいます。また、学生スタッフに憧れた小学生が、大学生になりスタッフとして活躍しているなど、てらこやが目指す「人が育つ循環」、そして、重層的な人の輪ができていると感じられることがうれしいです。

201802_terakoya_6.jpg

人がどんどんつながっていく場所

――今後の展望、そして、活動を通して、どんな社会にしていきたいかなどございましたら、お聞かせください。

 私たちは、ビジョンとミッションを掲げています。

・てらこやVison
地域の自然・歴史・文化を活かし感謝と共生が拡がる社会を目指す
・てらこやMisson
自ら考え行動できる人を育てる。求められれば社会のために汗をかける人を育てる

参加当初、保護者や学校の先生、塾の講師などとしか関わったことがない子どもたちも、大学生スタッフと本気で遊び、企画に取り組む中で、いつしか名前やあだ名で呼ぶようになります。そんな自然なかかわりが地域の中で作られていくと素晴らしいと考えています。

「てらこや」を通して子どもや学生と事業を作り上げていく時、大人たちにもたくさんの気づきがあります。価値観が異なるさまざまな世代が、力を合わせて子どもたちのために事業を実現していく中で、自分自身を問い直しながら、それぞれが何かを感じ、何かしらの次なるアクションを実行していってもらえたら、うれしいです。

私たちは全国の「てらこや」をつなぎ、立ち上げをサポートするとともに、現在活動に参加する大学生スタッフや子どもたちが大人になった時、どのような職業に就いたとしても、みずから社会的な課題に気づき、できることに取り組むことで社会を発展させていく、そのような大人に成長していって欲しいと願います。自ら考え行動し、必要とされれば社会のために汗をかける大人を一人でも多く輩出したいと願い、活動をしていきます。

てらこやの活動に参加したい子どもたち、てらこやを立ち上げたい方々がいらっしゃいましたら、ホームページよりのお問合せ、お待ちしております。

201802_terakoya_7.JPG

子どもたちが笑顔で過ごせるよう地域ぐるみで成長を見守っています

take action-いま私たちにできること-

学校や習い事とも違う場所、それが「てらこや」。私の子どもも「てらこや」にお世話になっていますが、毎回楽しみにしていて、外で遊んだり、工作をしたり読書をしたり......何よりも学生のお兄さんやお姉さんとのおしゃべりが楽しいようです。例えば、今後、親に言いづらいことができた時でも身近に相談できる人ができるのは心強いです。子どもに近い立場の学生さんも一緒に地域で子育てを行ってくれるのはとても素晴らしい形。「てらこや」の活動、どんどん広がって欲しいです。(林)

NPO法人全国てらこやネットワーク
ホームページ: http://terakoya-network.com/
Facebook: https://ja-jp.facebook.com/terakoyanetwork/
Twitter: https://twitter.com/terakoya_net

林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

林 美由紀さんの記事一覧はこちら