ものづくりを通して伝えたいことは?『ようこそ ようこそ はじまりのデザイン』

みなさん、こんにちは。フォトグラファーの宇野です。
やっと寒さが緩んできましたね。今回はものづくりに携わっている方に特におすすめしたい、この本をご紹介します。『ようこそ ようこそ はじまりのデザイン』です。

180306uno01.jpgこれは大阪に拠点を構えるクリエイティブユニット・grafが書いている本です。
grafは「ものづくり」という視点から「暮らしを豊かにする」ことを目指し活動しています。家具の製造販売、内装設計、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、飲食店の運営、イベント企画や企業のブランディングなど、仕事内容は多岐に渡ります。例えば「中川政七商店」の内装や什器デザイン・オリジナルプロダクトの開発、草間彌生さんとのコラボレーションでテキスタイルと家具を製作、奈良美智さんの展示会場を設計施工するなど。え!あれもgrafなの!?と驚く仕事も多いです。
先日、代表の服部滋樹さんのトークイベントがあり行ってきたのですが、お話がとても面白くて。その時に宣伝されていたこの本を買ってしまったわけです。

grafは服部さんを中心とする6人で1998年に創業。今では30名近い大所帯となっています。この本はgrafのメンバー数人で書かれていて、それぞれの仕事との関わり方や製品が生まれる裏側、思いを知ることができます。

ユニットで仕事を生み出す

創業メンバーの6人はアルバイト先(アンティーク家具の修理工房)で出会ったそうです。その後「衣食住の提案ができるユニット活動がしたい」という共通の思いを持ちながら、それぞれが別の仕事へ就きます。その間も定期的に集まっては「こんなことができるようになった」「こんなことを考えている」ということをよく話し合っていたとか。

そして1993年頃から、カフェやギャラリーで映像や照明器具、椅子、メニューなど、それぞれがつくれるもので空間全体を使った展覧会を開始。そこで受注販売することが最初の仕事だったそうです。「仕事を自分たちでつくる」スタイルや、家具・料理・デザイン・アートなど異ジャンルからなるユニットというのは、当時(20年前)はとくに珍しいことでした。服部さんは「今後はとくに仕事をつくれるような人になることが大切」と仰っていました。

徹底的に考えられたものづくり

grafのものづくりの独自性は「考える」という工程の深さにあると思います。使う人や観る人のこと、時代性などを徹底的に考えつくされているんです。そして使う人にも考えさせるというのがすごいところ。

例えば「TROPE」という家具のシリーズでは、人間が元々持っている「工夫する力」を呼び起こすためにちょっと不便につくられているとか。発表方法にもこだわり、ダンスカンパニーとコラボしてダンス公演の舞台装置としてTROPEを使ったそうです。そこには家具を見せるというより、ものを扱うという状況を客観的に見せる意図がありました。こんな風に、ものをつくるだけでなくその先までをつくる。特にイベント化し「体感してもらう」というのがgrafの特徴と言えるでしょう。

近年では、福井県鯖江市にあるめがね博物館の内装設計を手掛けられたそうですが、やはり設計だけにとどまらず。「著名人と眼鏡」というテーマで展覧会を行ったり、「マイ・ファースト・めがね」運動という地元の子どもに眼鏡をプレゼントする運動まで企画したそうですよ

grafの信念

grafには創業当時から、消費構造に一石を投じたいという思いがあったとか。今でこそミニマリストや断捨離といった言葉は多く見られます。でも買うことが豊かさの象徴のような時代は長かったのではないでしょうか。それに対する疑問や反発が創業時のエネルギーになっていたそうです。また、grafという名前には「自分たちで時代を測る」という意味も込められています。今の時代に残すべきものは何なのか?本当の豊かさとは?そんなことをものづくりを通して生活者に問い続けているのです。

この本を読んで、grafの信念やものづくりの奥深さに愕然としました。そして自分が大切にしていきたいことは一体何なんだろう?と考えました。仕事だけでなく、生活に関してもです。目先の欲で選んでしまっていることも多いな...と。いろいろなことを見直すきっかけをこの本からもらったと感じています。

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さて、今日の写真はミモザです。先月のとても寒い日に見つけ、春の近さを感じて嬉しくなりました。季節に敏感になれるのも写真を撮ることのメリットではないでしょうか。

ビジネス本ともハウツー本とも違うこの本。きっと読んだ人それぞれの気づきがあると思います。紹介しきれていない濃いエピソードがまだまだ書いてあるので、ぜひ読んでみてください!

宇野 真由子

Writer 宇野 真由子

1979年生まれ。北海道出身。ビジュアルアーツ大阪校写真学科卒業。
写真専門ギャラリーでの勤務を経て、沖縄に移住。撮影会社にてブライダルを中心とした人物撮影や商品撮影等に従事。2015年秋に大阪へ戻り、フリーランスとして活動開始。撮影以外にも、写真教室・ワークショップ等、写真の楽しさを広める活動も開催している。
http://unophotoworks.top/top/

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