農園スタイリスト・ハーブティーブレンダー 秋庭寛子さん@茨城県

地方で働くってどんな感じ? 地域ならではのフリーランス事情を知りたい!
「地方フリーランス生活」では、自分らしいスタイルで働く地方フリーランサーに、地方で活動することのメリットやデメリットのほか、日頃心がけていることなどを伺います。今回は茨城県で活動されている農園スタイリスト・ハーブティーブレンダーの秋庭寛子さんにお話をお聞きしました。

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■秋庭寛子さん プロフィール

活動地域 茨城県
フリーランス歴 2年
職種

農園スタイリスト・ハーブティーブレンダー

経歴

1985年生まれ。埼玉県久喜市出身。文化女子大学の染織専攻を卒業。畑歴2年。建築リフォーム会社のOL時代にハーブと出会いHerbal Forest の北川栄惠先生の下で学ぶ。ビーガンレストラン『アインソフ』銀座店に勤務。その後、2013年に結婚。家族は農園料理人であり、ふくまる米農家の夫、やんちゃな4歳、3歳の男の子、そして、植物の気持ちがわかるお義母さん。

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現在は、どんなお仕事をしているのですか? 

現在は全部で6つの仕事を掛け持ちしながらやっています。1つ目は、ハーブ農家。フレッシュなハーブをレストラン、バー、カフェ直売しています。2つ目は、お米農家です。「ふくまる」という品種のお米の専門農家で、地元にある青木酒造様の日本酒「御慶事 ふくまる」に使用していただいています。3つ目は野菜農家。茄子とブロッコリーを作って市場に卸しています。4つ目は、加工品の販売。ハーブティーや黒米などを商品化して販売しています。5つ目は、畑での授業です。地域の保育園や塾と提携して、食育の場所として、畑で授業をしています。「畑でものがたりを」をテーマに大きなカブやカボチャの馬車など、楽しみながら食育をしています。6つ目は、農園イベントへの協力です。様々な団体が主催する農業体験や農園レストランのイベントをお受けしています。

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学生対象のイベントの様子。ビニールハウスでランチを食べました。

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農園で採れたハーブでオリジナルハーブティーをブレンドし、販売しています。

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畑には、保育園児が食育の授業のため定期的にやってきます。

フリーランスになる前はどのようなお仕事をしていましたか? フリーランスになったきっかけを教えてください。

大学で染めと織りを学んだ後、自然派の建築リフォーム会社のショールーム受付事務や雑貨販売をしていました。入社してすぐ、ショールームで定期的にワークショップを企画・運営することになり、興味のあったハーブの先生を呼んで、講座を開催しました。その際に、ビビビッときてしまって。もっと知りたいと思い、休みの日に先生の教室に通い始めたのが最初のきっかけです。

転機は2011年の東日本大震災です。生きる意味を見つめる機会になりました。じっくり考えてみると「自分の人生は、スイッチポンで何でもできて、可愛い洋服を買って着飾って、便利さの上でなんとなくふわふわ生きている、主体性のない人生だな」と気づいてしまったんです。それで「もっと自分らしく生きていきたい」との想いで、興味のあるイベントや農業体験などに参加し始めました。

イベントはどんな内容だったのですか?

特に印象に残ったのが「オープンハーヴェスト」というイベントでの体験です。シェ・パニースというアメリカの有名なオーガニックレストランのシェフが来日するイベントで、参加者が自分の手で作物を収穫したり、鳥の皮をはいだりしたんです。スーパーでしか見ない食材のその先があること、当たり前だけど、そこには生産者がいて、生き物がいて...という過程があることに気付きました。そして「生産者の近くにいたい。『たべる』と『つくる』を繋げるところにいたい」とい思うようになりました。

その後、銀座のカフェレストランで、ハーブティーの知識を活かし、ドリンクの開発やサービスなどを経験しました。お店には農家さんから採れたての野菜が届くのですが、その美しさや美味しさ、味に大いに感動しました。「農家とはクリエイターであり、創造的な素晴らしい仕事だな」という尊敬と憧れが生まれました。

そんな時に、職場近くのレストランで料理人をしていた夫と出会いました。お互いに農業をしたい気持ちがあり、ノートに夢の農園の姿を描きながら夢を膨らませました。その後結婚し、すぐに年子で息子2人を産んだ後、先に兼業で農業を始めていた夫と一緒に農業を仕事にしました。

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料理人の夫と。

なぜ古河に移住されたのですか?きっかけや経緯を教えてください。

夫の実家がここで代々農家をしていました。結婚前、夫の実家に遊びに行った際、ハーブを育てながら、土が近くにある生活、古いものを大切にする生活を送っているお義母さんの姿を見て、「この場所で、家族で農園をしてみたい」と思うようになりました。

とはいえ、結婚してから子どもが生まれるまでは「都心部での生活のほうが刺激的で楽しいよね」と思っていました。都心と田舎の中間地点に住み、銀座のレストランに通ったり、田舎の畑で農業を満喫したりしていました。

でも、子どもを産んだ後に価値観が一変。「子どもが伸び伸びと、どろんこで走り回り、遊びながら虫や動物の生態を知り、旬の果物や野菜を自分の手で収穫して、採りたてを食べる生活をしたい」と思うようになりました。

それに、核家族で赤ちゃんと母親である私がいっぱいいっぱいになるよりも、おばあちゃん、おじいちゃんも含むみんなで子育てし、多様な価値観に触れるほうが、子どもも母親である私も幸せだと思いました。そこで下の子が生まれたのをキッカケに、私から、夫の地元に引っ越したいと提案しました。

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真ん中にいるのが義母です。農法は、義母の優しさ溢れるやり方を受け継いでいます。

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保育園から帰ってくると子どもたちは畑に直行。その季節の美味しいものを採りに行きます。春だったら、苺やラディッシュ、夏はミニトマト、キュウリ、とうもろこし。秋になると葡萄を頬張り、冬は金柑を食べています。

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お米農家なので、田んぼに行くと、カエルの泳ぎ方を見たり、ザリガニに驚いたり、しらさぎを追いかけたり。子どもたちは自然の営みを感じながら育っています。

古河で仕事を始めるにあたって、苦労したことはありますか?

初めての子育て。しかも年子のやんちゃな男の子。夜泣きや寝ない時もあり、大変でした。子育てに加え、農業も初めて。経験が浅いために失敗ばかりしていました。

また、この地域は独特の方言があるので、最初はまわりの年配の方々が何を言っているのかわかりませんでした。とにかくニコニコしながら、「ありがとうございます!」と言って乗り切っていました。

私達家族は、古河市のポスターになったり、毎月たくさんの人たちが来るイベントを開いたりしていたので目立っていました。最初は地域の人たちは遠目で見て、ある事ない事言っていたようです。

でも、気にせず毎日畑や田んぼで頑張っていると、どんどん声をかけてくださるようになり、困ったときに助けてくださったり、高価な機械を貸していただけたりするようになりました。

地元と地元以外のクライアントの割合をお聞かせください。

お米: 東京:茨城=0:10

ハーブ:東京:茨城=10:0

加工品:東京:茨城=6:4

食育&イベント:東京:茨城=6:4

といった感じです。

取引先はどのように開拓しているのですか? 営業スタイルに工夫はありますか?

以前、飲食店で働いていた時のつながりでお客様を紹介していただくことが多いのですが、いつも情報を絶やさないようにSNS発信を続けています。また、取材の依頼が来た時は受けるようにしています。

また、営業をする場合はフェイスブックやブログで検索し、オーナー様の人柄を把握し、うちの農園に合いそうであれば、連絡をとってみるようにしています。お取引先にならなくても、その後友人関係に発展することもあります。

古河で働くことを選んで良かったこと・悪かったことを教えてください。

茨城県古河市は、電車で東京駅まで1時間でつきます。交通の便が良いので、農閑期で時間があるときは、夫婦でドレスアップして都心のレストランに食事に行くことも。程よい距離感も気に入っています。

また、古河藩時代の古民家が多く残っていて、今、古民家の農泊プロジェクトに関わっているのですが、それが本当に面白いです。モニターツアーも大成功したので、地域の人達と古民家を通じて、盛り上げていきたいなと思っています。

働き方については、農家というフリーランスの働き方にしてから、主体的に動けることの楽しさを感じています。全て自己責任。やり甲斐や感動に溢れています。

残念だと思うのは、古河の街と田舎が分かれていて、食文化のギャップがうまれていること。農家以外の地域のこどもたちが、生きている野菜に触れていないこと。素晴らしい生産者や日本酒の蔵もあるのですが、知らない方も多いことです。古河のみなさんに、街の魅力に気づいて、楽しんでもらいたいです。

今お住まいの土地ならではの仕事の合間のリフレッシュ方法があれば教えてください。

朝日をみて、昼は青空をみて、夕日を眺め、満点の星空を見ることです。
咲き誇っている季節の花たちの香りや美しい形をながめることです。

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目の前に、こんな美しい景色が広がります。

現在の課題と、今後の目標をお聞かせください。

休みのとりかたです。フリーランスで自分で時間を決められる分、ついつい働いています。

仕事とプライベートが一緒になってしまう感覚があります。

仕事については、今後は、雇用できるスタッフを増やせるよう、ハーブ事業と加工品事業を拡大していきたいです。

最後に、地方で働くことに興味のあるフリーランサーへ、メッセージをお願いします。

地方は子育てもしやすく、伸び伸びとしています。今はスマホさえあれば、会議だってできるし資料だって作れます。リアルタイムでその場にいるかのように動けます。限られているからこそ、効率的に動けるように思います。

自分の時間、家族の時間、子育て、仕事、地域の活動。どれも自分でコントロールしながら大事にできる。それが最高のご褒美です。

※この連載のバックナンバーはこちらからご覧ください。

曽我 美穂

Writer 曽我 美穂

子どもの頃から環境に関心を持ち続け、現在はエコライター・エディター・翻訳家として独立。環境に関する雑誌やWebサイトでの執筆、翻訳、書籍編集、フェアトレードカタログの企画編集のほか、環境NGOやNPO法人の広報活動にも関わる。また、2年前から地元の公民館や自宅で、こども英語教室の運営も行っている。私生活では2009年生まれ、2012年生まれの二児の母でもある。

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