編集・ライターという共通点を持ちつつ、異なるキャリアパスを経て現在に至ったベテランフリーランサー3人によるトークカフェ。読者から寄せられたフリーランスのお悩みに、ゆるーく、マジメに答えていきます。 読者のみなさまからのお悩みも募集中です!応募はこちらから>>
た・ま・りのプロフィール
●柏木珠希(かしわぎたまき):ライター大学在学中から執筆業を始め、卒業と同時にフリーライターに。2008年から2010年にはライター業の傍ら、築70年の長屋をみずから改装して作ったギャラリーカフェを経営。女性向けの「占い」「開運」といったテーマから「低リスク・低コストの店舗開業」「不動産」などビジネスものまで幅広く執筆。近著はコミックエッセイ「占いで結婚しました!」(イースト・プレス)。アラフォー・アラフィフの結婚やネット婚活がテーマの執筆も多い。
[リズムーンの関連記事]
仕事前のスノボーが息抜きに。田舎暮らしを満喫するライター兼ビルオーナー@長野県
【特集】ライターに寿命はあるのか?
●谷畑まゆみ(たにはたまゆみ):編集・ライター、キャリアコンサルタント編集プロダクションで女性誌編集者としてキャリアをスタート。心理学を学ぶために40代で会社を離れて大学院へ。修了後はキャリアコンサルティング技能士や産業カウンセラー資格を取得し、心理学の知識をもつフリーランスエディターとして始動。ライフワークは「働く女性の生き方」取材、これまでに 取材した一般女性は1000人以上。先日DODA転職フェアに、キャリアアドバイザーとして参加。
[リズムーンの関連記事]
フリーランスインタビューVol.105「40代で社会人大学院生になり、キャリアの軸足が2つに」
●小野梨奈(おのりな):リズムーン編集長・WebプロデューサーIT企業、女性向けWebメディア編集部で勤務し2006年に独立、2014年に合同会社カレイドスタイルを設立。国内外のネットワークを活かして最適なチームを組みながら、研究機関のサイエンスコミュニケーション支援や、女性向けコンテンツの企画編集を数多く手がけている。独立時に苦労した自らの経験から、2009年に「リズムーン」を立ち上げた。プライベートでは、3人の子を持つワーキングマザー。
リズムーンでの執筆記事はこちら
小野:先月からスタートした、"フリーランスの仕事の悩みや困った!"に答えるコーナー。初回記事にたくさんの反響をいただき、ありがとうございました。さっそくですが、今月のお悩みにいってみましょう!
専門性をどのように絞っていったらよいか悩んでいます
現在、フリーランス3年めのライターです。これまでは実績になるようにいろいろなジャンルの仕事をやってきましたが、これから先、専門性をどのように絞っていったらよいか悩んでいます。みなさんは、どのような段階を経て、現在の専門にたどりついたのでしょうか?(30代・ライター)
柏木:私、あまり専門がないんですよね・・・。
谷畑:意外です。たまきさんは執筆者としてさまざまなテーマの著書をたくさん出されているので、専門分野が多い印象がありますが。
小野:私の中でも柏木さんは、占いや不動産、シェアハウス、婚活など、ご自身の体験や経験をそのまま面白いコンテンツにする専門家という印象です。
柏木:そんなことないです。一般的には、おそらく自分で絞らなくても、「このテーマはイマイチだな。この人はこっちの方が得意だな」と外部(=発注者)によって勝手に絞られていくと思うんです。「いつのまにかこの分野の仕事ばっかりになっていた」という人って、実は多いのではないかと。
あと、どこでスタートしたか、も大きいですよね。私ははじめからどこにも属していなかったのでバラけていますが、最初がキャリア系雑誌だったらキャリア系など。ダイビング雑誌出身でビーチライターになった友人もいます。まゆみさんは、どうでしたか?
谷畑:私、まさにその"いつのまにか"系です(笑)。自分で決めて絞ったのではなく、来た仕事を受けるうちにいつのまにか専門ができたケースですね。
そもそもはアーティストを取材する音専誌のライターになりたいと思って、芸能音楽誌編集を専門に請け負う編プロに入ったんです。ところが、会社の方針で途中から女性誌編集に特化した路線に切り替わってしまって。最初は"話しが違う"と辞めることも考えましたが、任された仕事をひとつずつこなすうちに、徐々に面白くなってのめりこんでしまい。気づけば編集部から"働く女性のインタビュー企画"を依頼されることが多くなり、それが今につながっています。小野さんはどうでしたか?
小野:独立してから今まで、主軸はWebのコンテンツ制作にありますが、フリーランスのコミュニティを運営していたり、最近は商品開発もやっていたりで、「私の専門は○○です」と一言で説明するのは難しいかも・・・。
柏木:戦略的に絞れていない私たちが言うのもなんですが(笑)、相談者さんはまだ3年目ということですし、焦って決めなくていいんじゃないですかね。いろいろやってみたらいいと思います。
谷畑:私も同感です。まず、やってみないことには得手不得手はわかりませんよね。どこに得意分野があるかわからないので、できれば食わずぎらいをしないで、できるだけ来るものを断らずに受けてみる。さまざまな球を打つことで徐々に向き不向きが体感できたり、読者のリアクションやPV数などから「このジャンルは好きなだけでなく、つくり手としてのニーズもありそう」など、主観と客観の両軸から判断することができてくると思います。
ちなみにたまきさんは、"専門を絞ろう"と意識されたことってありますか?
柏木:実はあまりないんです。ただ、絞らなかったことで損してるかも・・・と感じることはありますよ(笑)。
本が出て、しばらくたってからブームがくることが多いのですが、その頃には私の興味が全然違うところにいってしまうので・・・。そのまま情報を発信し続けていたら、専門家としてコメントを求められるとか、違った展開になっていたかもしれないなと考えることはよくあります。
私、大体いつも世間の一歩以上先にマイブームが来て本を出してしまうので、みんなによく「半歩先でいいんだよ」と言われています。
小野:先ほど、外部によって絞られていくということでしたが、今はSNSでの発信がきっかけで注目されるようになって本を出版するなど、ライターでも、いわゆる依頼されて記事を書く商業ライターとはまた別のキャリアパスがありますよね。リズムーンで開催するランチオフ会でも、「SNSを営業活動にどのように活用しているか」というトピックはいつも話題にあがります。仕事を待つだけでなくて、ライター側もSNSで発信して売り込みしていかないとダメな時代なのかもしれません。
柏木:確かに、それはありますね。
谷畑:Webメディアの場合は特に、執筆者としてキャラクターが立っている書き手のほうがより選ばれる印象はありますね。
小野:ちなみに、専門性や個人のバリューを上げるために著書を出すことはどう思われますか?
柏木:どうなんでしょう・・・。ひと昔前だったら有効だったかもと思いますが、今は本を出す時点で、ある程度自分で集客できて、売れる人でないと難しいと思います。ブログに読者が何万人いますとか、メルマガやっていてその読者が何千人ですとか、イベント主催していますとか・・・。
小野:なるほど。出版のハードルは、やはり高いんですね・・・。これまでの話をまとめると、専門性の絞り方としては、
1)やっていく中で、外部によって専門性が絞られていく
2)「私はこれでいく」と早めに決めて、セルフブランディングに軸をおいて発信を続けることで、専門性を高めていく
という2パターンがありそうですね。
柏木:1)のパターンだと、まずは、取引先の人にかわいがってもらうことが大事ですね。
小野:前の「ライター対談会」の時におっしゃってくださった「上島竜兵になれ」ってことですよね(笑)。
柏木:そうです、そうです。
谷畑:からみやすさ、大事ですよね。ちなみに私、始まりは"いつのまにか"系でしたが、会社を辞めて40代でフリーランスになったときに初めて、「専門分野」を打ち出してみたんですね。セールスポイントが何もないのも不安でしたし、大学院で専攻した心理学も活かそうと。
具体的にはアメブロのプロフィールに「心理学やキャリア支援の知識をもっていること」「働く女性企画の仕事実績」をアピールしてみました。するとブログをみた編集の方からアドラー心理学の書籍のお仕事をいただいて。ある程度キャリアを積んでから専門性を打ち出しても、遅くはないのだと思います。
小野:確かに。専門性の棚卸しや見直しはいつでも可能ですものね。
実は私、昨年40代に突入しまして、これから先どんな仕事をしていきたいかを掘り下げて考える時間を意識的に取ったんです。その結果、それまではあまり打ち出してこなかった「理系出身」であることが、自分の中で外せないアイデンティティの一つだというのを再確認することができて、「サイエンスアウトリーチ」という軸を自分の強みに加えました。
こんなふうに、専門性は後付けもできるので、今すぐに決めなくちゃ、と焦る必要は全然ないですよね。
ちなみに、たまきさんが次に注目されているテーマはどのあたりですか?
柏木:ふふふ。「八百屋」です。
小野:ええ!八百屋? めちゃくちゃ気になります。が、長くなりそうなので今回はここまで〜!
<た・ま・りの一言>
た:自分が何が得意か見極める「何でも屋さん」の時期も必要!
ま:専門はあったほうがいいけど、焦らなくても大丈夫!
り:キャリアを積んでからでも、専門性の棚卸しや見直しはできる!
読者のみなさまからのお悩みを大募集します!応募はこちらから>>