今、そしてこれからのビジネスに欠かせない視点。ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザイン(Universal Design)、略してUD。皆さんはこの言葉をご存知でしょうか。
初めて耳にした方や、バリアフリーのこと?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今、UDは、多くの企業で欠かせないキーワードになっており、日常においても知らないとちょっと恥ずかしいかも!?な言葉になりつつあるのです。

今回は、そんなUDについてご紹介します。

ユニバーサルデザイン(UD)とは?

UDとは、年齢や性別、国籍、障がいの有無に関係なく、すべての人々にとって、可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザインのことをいいます。疎外感や特別感のない「仲間外れ」をなくすデザインといえるでしょう。

アメリカ人建築家であり、工業デザイナー、そして車いすユーザーであったロン・メイス氏が、1970年代に提唱した概念です。  

日本では、1980年代ごろから少しずつ広がりはじめました。しかし、まだその認知度は高いと言えず、内閣府がバリアフリーとUDの認知度を年代別に調べたところ、「知っている・どちらかといえば知っている」と答えた割合が、全世代の平均がバリアフリーは9割以上であるのに対して、UDは6割未満でした(平成29年度バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書[内閣府])。

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バリアフリーとユニバーサルデザインの認知度
(平成29年度バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書[内閣府])

しかし、若い世代に注目すると、10代後半では91.3%、20代では73.3%と、その認知度の高さがわかります。最近では積極的にUDを授業のテーマに取り上げる学校が多いようで、若い世代の間では当たり前の概念になりつつあると言えるでしょう。

私たちの日常にすでにあるUD

最近、私が体験して感動したUDの例のひとつに「UDタクシー」があります。

車内は、天井が高く広々としており、握りやすい手すりがあったり、高齢者も乗りやすいよう床を低くしたりするなど、誰もが使いやすいような工夫がいたるところにみられました。私は、手や脚に障がいはありませんが、その乗り心地の良さに「次もUDタクシーを選ぶ」と心に決めました! 同乗した足に障がいがあり杖を使用している友人も「乗り降りが楽でうれしい」と話していました。 そして、ドライバー目線でわかりやすくレイアウトされた機器類など、運転手さんにもやさしい工夫がされているのも、「みんな」を大切にするUDだからこそのポイントです。

私が乗ったのは、トヨタ自動車のジャパンタクシーです。料金は従来のタクシーと同じでした。もちろん障がいのあるなしに関係なく使えます。まだ利用したことのない方は、ぜひ試してみてください! https://toyota.jp/jpntaxi/

UDのわかりやすい例にはほかに、自動ドアや駅のホームドア、センサ式の照明などがあり、UDは、すでに私たちの生活のなかでさりげなく存在しています。

バリアフリーとどう違うの?

バリアフリーは、1970年代から日本でも知られている言葉です。

UDは「障がいのあるなしに関係なくみんな」を対象にした概念であるのに対して、バリアフリーはその対象を障がい者と高齢者に限定しています。したがって、健常者にとっては、「バリアフリーは、障がい者のもの」というひとごと感が強いという側面をもつものでした。  

バリアフリーの例として、点字ブロックがあります。点字ブロックは、日本で視覚障がい者のために発明されました。しかし、街中で点字ブロック上に停められたたくさんの自転車をみかけることも多いと思います。これも「ひとごと」だからできてしまうことなのだと思います。

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ただ最近は、駅のアナウンスで「黄色の点字ブロックの内側までお下がり下さい」と、「みんな」のものとして点字ブロックが利用されることもあります。明るい黄色で凹凸のあるデザインは、視覚に障がいのない人にとっても、目立つしわかりやすいですよね。 また、みなさんの家庭にもあるウォシュレットやライターは、もともとは、腕に障がいのある人向けに開発されたものです。このように、バリアフリーなものがUDに進化することもよくあります。

どちらが正しいか!? どちらがいいのか!? ではなく、「より多くの人にとってより使いやすくするには?」という視点のヒントとして、UDを知ることが大切なのだと思います。

自覚しにくい生きづらさ。障がい者らの多様な声がUDな社会へのカギ

社会は、長い間、障がいのない健康な成人男性をターゲットとしてつくられてきました。  

たとえば、あなたにも、妊娠中やケガをしたとき、大きな荷物を運ぶとき、体調が悪いとき......、階段しかない駅で、不便さを感じる日がありませんか?  

そんなふうに、実は、健常者といわれる人たちも日常で不便さ・不快さを感じながら暮らしています。でも、そんな「多様性を受け入れてくれない環境」について、多くの健常者たちは文句をいいません。今だけ自分がちょっと努力すればいいだけだと考えてしまいます。  

でも、その不便さや不快さも積もり積もれば、「生きづらさ」として、心や人生に影響します。

一方、障がいをもつ人たちは、その不便さや不快さを、より強く、よりわかりやすく感じることができる存在ともいえます。したがって、その声でつくられたものは、みんなにとって使いやすいものになる、つまりUDなものになる可能性がぐっと上がるのです。

今、行政による雇用率の水増し問題で注目を浴びている障害者雇用。先日、ある障害者雇用や障がい者のキャリア形成に積極的な民間企業にお話を聞く機会がありました。その会社では、障がい者社員への多様な配慮に慣れることで、出産・育児や病気、家族の介護等で退職する社員が減るなど、ほかの社員にとっても働きやすい職場づくりに効果があったそうです。

障害者雇用は、理想論をいうだけではできない。でも、その先に見えてくる、みんなが暮らしやすい社会のヒントを見ることができた気がしました。

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UDは常に改善途上。多様な声に耳を傾けながら進化していく

日本において、不便さ・不快さを感じやすい人たちである、高齢者の数は約3500万人、障がい者の数は約936万人、ベビーカーに乗る3歳未満の子どもは約300万人です。これに行政がカウントしない「軽度」の障がいを持っている人、妊婦、ガンなどの病気を抱えている人、LGBT、そして、その家族や友人などを含めると、UDの市場は無限に広がります。

高齢化やグローバル化、様々なマイノリティの可視化などを受け、今、多くの企業では、UDがCSR(企業の社会的責任)の枠を超えて、ビジネスとして欠かせないキーワードになっています。

そして、UDには、ゴールはありません。常により使いやすく、より多くの人に、を目指して、多様な人たちの声を大切にしながら進化していきます。

すべての商品、サービス、施設、制度は、デザイン、つまり人の考えから生み出されています。これからは、誰の声を聞いて、どこに基準をおいていくべきか

社会が「『障がい者』と『健常者』」といった貧弱なイメージの枠を超えた、多様な人たちで構成されていること、そして「みんな」の声を大切にする意義を教えてくれるUD。
これからのものづくりや環境づくりの視点として、もっと多くの人たちに知っていただきたいと思います。

桐田 さえ

Writer 桐田 さえ

出版社等に勤務後、2013年よりフリーランスのライター・編集者に。また、産後3か月で社会福祉士を取得。現在は、当事者や専門家、高齢者施設等を取材し、主に障がいや介護に関する記事や実用書、専門書のお仕事が中心。子どものときに、おたふく風邪による難聴(ムンプス難聴)で片耳を失聴した。一女の母。

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