国内外で暮らす女性たちが、「しなやかに、じぶんらしく生きる」日常をお届けするエッセイ。
コロナ禍で先行きが見えない生活の中で、バタバタ忙しい日常の中で、少し狭くなりかけた視野を広げ、自分らしく生きるヒントをお届けします。

夏になると毎日でも食べたいジェラート。言うまでもなくイタリアを代表する美食のひとつです。
イタリアではどこの町にも手作りジェラテリア Gelateria(ジェラート店)があり、定番のフレーバーからお店独自のフレーバーまで種類も豊富。
ジェラート大好きな私は、フィレンツェじゅうのジェラテリアを食べ歩いています。
初めて食べるお店では大好物のピスタチオとフィオール・ディ・ラッテ Fior di latte(直訳するとミルクの花)の2フレーバーを選び、自分の好みに合うかどうかをチェック。合格だったら、頭の中にある、「おいしいジェラテリアリスト」に追加します。そのリストのおかげで、食べたくなったときに、近場にある店をチョイスできるので、ジェラートで失敗したことはありません。
というのも観光都市フィレンツェには、残念ながら悪質ぼったくりジェラテリアがあるのです。
そういった店は価格が明確に提示されておらず、勝手に大きめの容器にもりもりと盛り付け、頼んでいないのに生クリームなどのトッピングをされて、10ユーロ(現在のレートで約1300円)ほども請求されるそう。
実際、私の友人・知人で被害にあった人が数人います。共通点はイタリアに来て日が浅い外国人や観光客。イタリア語に不慣れでジェラート価格の相場を知らないので、「そんなに高いの?」と思いながらも支払ってしまうようです。
こういった悪質店のジェラートは工場生産品。手作りの本物ジェラートとは味も品質も劣ります。
さて、本物の手作りジェラートを見分けるコツはというと......
- 価格がきちんと表示されていること。
どこのジェラテリアでもカップかコーンが選べ、それらの大きさに合わせて価格が変わります。
フィレンツェでは普通サイズで2種類の味が選べて2.5ユーロ前後が相場です。 - バール・カフェ、レストランの店頭で販売されているジェラートは基本的に工場生産品。
高級なレストランではジェラート店から手作り品を仕入れていたり、シェフが手作りしている場合もありますが、カジュアルなレストランでは工場生産品がほとんどです。 - ショーケースの中で高く盛り上げられている大量すぎるジェラートは工場生産品の可能性が高い。
お店のキッチンで新鮮な材料を使って作っていれば大量には作れませんよね。店によっては個々のジェラートが蓋つきの容器に入っており外から見えない場合がありますが(写真をご参照ください)このタイプは確実に手作り品と言えます。
今年イタリアでは、「ジェラート」を定義する法律が制定されたそうです。
ジェラートは口当たりを良くするためにかき混ぜて空気を含ませるのですが、工場生産品は機械で空気を注入するため空気含有率が80%にもなり、これではまるで空気を食べているようではないかというのが制定の理由。ちなみに手作り品の空気含有率は約30%です。
この法律、どのようなものなのか調べてみたら、けっこう厳しい内容です。
新鮮な季節の食材を使い、人工着色料と保存料の使用不可。パーム油使用の市販品(ヌテラ、オレオ、M&M'sなど)は具材として使用不可。前述の空気含有率も上限が決められ、ミルク・タマゴの最低含有率も決められています。違反した場合には2000~10000ユーロの罰金。
これでもう工場生産品は「ジェラート」と呼べなくなりました。
これを機にイタリア全国の悪質ぼったくりジェラテリアが絶滅することを心から願う私です。