ブドウ収穫の季節がやってきた

国内外で暮らす女性たちが、「しなやかに、じぶんらしく生きる」日常をお届けするエッセイ。
コロナ禍で先行きが見えない生活の中で、バタバタ忙しい日常の中で、少し狭くなりかけた視野を広げ、自分らしく生きるヒントをお届けします。

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大家さん手作りの、「ブドウのスキアッチャータ Schiacciata all'uva」をいただきました。ブドウ収穫の時期にしか食べられないイタリア・トスカーナ州の秋のスイーツです。

「スキアッチャータ Schiacciat 」とは「平たく潰した」という意味で、平たい形をしたパンのこと。普段のスキアッチャータは塩味の食事パンですが、このパン生地にワイン用の小粒のブドウを混ぜて焼くとこのスイーツになります。

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トスカーナではちょうど今がブドウ収穫の時期。パン屋の店頭にこのスイーツがお目見えすると、「ヴェンデンミア Vendemmia (ブドウの収穫)」の季節だなと、しみじみ秋を感じます。

数年前に、友だちのブドウ園の収穫を手伝いに行った大家さんが、ワイン用のブドウをお土産に持ってきてくれたことがあります。それまでワイン用のブドウを見たことも食べたこともなかったのですが、食べてみるとかなり甘く、この味の濃いブドウを絞って発酵させると濃厚な赤ワインになるのだなと納得しました。

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トスカーナといえばキアンティの赤ワインが有名ですね。

キアンティ地方はフィレンツェとシエナの間に広がるブドウの産地。この地域特有のサン・ジョヴェーゼ種のブドウ75%以上をベースにして作られるワインがキアンティ・ワインです。

「キアンティ・クラッシコ Chianti Classic」は、キアンティ地方の中でもさらに限定された場所で生産され、サン・ジョベーゼを80%以上使うことが定められています。条件を満たしたものだけがキアンティ・クラッシコと呼ばれ、「ガッロ・ネーロ Gallo Nero(黒いおんどり)」のラベルを着けることができるのだそうです。

この黒いおんどり、ガッロ・ネーロには、こんな伝説があるそうです。

その昔、フィレンツェとシエナはキアンティ地方の覇権をめぐり戦争に明け暮れていました。土地の境界線を平和的に定めるために取られた方法が、早朝おんどりが鳴くのを合図に双方の街から馬を走らせ、お互いが出会った地点を境界線にしようというものです。

さっそく黒と白2羽のおんどりが用意され、白いおんどりを選んだシエナはおんどりが大きな声で鳴けるよう、たくさんの餌を与え心地よい寝床を用意。いっぽう黒いおんどりを選んだフィレンツェは、餌も与えず粗末な扱いでした。

フィレンツェの黒いおんどりは日が昇る前に空腹のあまり鳴き始めましたが、好待遇を受けたシエナの白いおんどりは朝寝坊してしまい鳴き始めるのが遅く、結果、馬を走らせ始めるのが早かったフィレンツェがキアンティの広範囲を獲得したのです。

それを記念して、キアンティ・クラッシコのラベルには黒いおんどりマークが採用されているのだそう。

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私はお酒をあまりたしなまないのでワインにも詳しくはないのですが、友人宅に食事に呼ばれてワインを手土産にするときには、イタリアのワイン格付け上級D.O.C.または最上級のD.O.C.G.というラベルが付いた、原産地や製造法、ブドウ栽培法が定められたワインを買うようにしています。

これらのラベルが無くても高級で美味しいワインももちろんありますが、私のような無知な素人にはラベルが指標になるので助かっています。

最上級のラベルが貼ってあるワインでも物によりスーパーのワインコーナーで10ユーロ程度で手に入るのは、さすがワイン大国イタリア。

「赤いワインは血に変わる」(「健康に良い」という意味)ということわざもあるほど、イタリア人の生活になくてはならない飲み物なのです。

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Sachi

Writer Sachi

大学でのイタリア美術史研究に端を発するイタリア愛が高まり、2013年秋に東京での会社員生活を捨ててイタリア・フィレンツェのジュエリー学校へ留学。2年間在学の後この地に留まり製作を続けています。
未来の自分が後悔しないために、やりたい事は実現させる。今を楽しむ!をモットーに、40代シングル外国人には決して楽しいことばかりではないイタリア生活を、マイペースに”楽しく”やっています。

instagram:@sacifelice Online shop: Felicina Design

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