温かい"家庭"を。「特別養子縁組」という親子のカタチ

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photo by Mindy Olson P

この秋、産婦人科医療をテーマにした「コウノドリ」というヒューマンドラマがTBSでスタートしました。原作は、鈴ノ木ユウさんによる同名の漫画(講談社)で、累計150万部の人気作です。

実は、綾野剛さんが演じる主人公の産科医は、乳児院と児童養護施設で育ったという設定。放映されたばかりの第5話では、その生い立ちや、「特別養子縁組」という制度が取り上げられていました。

国際社会では家庭で養育することが主流

今、日本には何らかの事情で実の親が育てられない子どもが約4万6千人。その約8割以上が、乳児院、児童養護施設、自立援助ホームなどの施設で暮らしています(平成26年度3月厚労省「社会的擁護の現状について」)。

しかし、国連「子どもの権利条約」にも「家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべき」とあるように、先進国の多くでは、子どもをできるだけ「家庭」で育てる動きが。下記のグラフを見ても、施設中心の社会的擁護をする日本では、里親が育てる子どもの割合が目立って低いことがわかります。

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(平成26年度3月厚労省「社会的擁護の現状について」より)

赤ちゃんを家庭で育てられる「特別養子縁組」制度

とくに赤ちゃんにとって、家庭という環境で育つことは、愛着形成や脳の発達という意味でも大切だと言われます。先述の「特別養子縁組」は、原則として生みの親が養育できない6歳未満の子どもを、家庭裁判所の判断に基いて、育ての親と結ぶ制度。今、この普及をめざして、「ハッピーゆりかごプロジェクト」(日本財団)や「すべての子どもに家庭を! キャンペーン」(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)などの社会活動も展開されています。

今月は、これにまつわるシンポジウムも。日本で生まれ、米国の日系人夫婦の養子になったグレン・ワカイ上院議員(米国ハワイ州)の講演では、47年ぶりに再会した生みの親への愛情を語る笑顔が印象的で、色々な形の家族がある社会の意義を感じました。

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パネルディスカッションで、現状と課題が語られました。

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「生みの親に、無限の可能性を与えられた」と語るグレン・ワカイさん。児童福祉法改正に向けて、家庭養護について考える~育ての親との出会いで無限の可能性を得たグレン・ワカイさんを迎えて~(一般社団法人次世代社会研究機構・主催)

日本でも、政府は、施設よりも里親委託を優先して検討するべきという姿勢。その上で、「里親の数の確保が不十分」な現状などから「施設養護の役割も大きい」としています(「 里親委託ガイドライン」)。しかし、自治体の動きは、愛知県が「愛知方式」と呼ばれる、特別養子縁組を前提とした新生児の里親委託という画期的なとりくみを続ける一方、千葉県が乳児院の新設を進めているなど、方向性はさまざまです。児童福祉法の改正も課題のひとつ。

こうしているあいだに、実社会では、育てることの困難にまつわる多くの負の連鎖も生じています。

課題は山積みですが、厚生労働省も、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会を立ち上げ、審議を進めるなどしているところで、国際社会に一歩進んだ実例があるのも事実です。この問題、今、子どもたちを大切にする社会や人生の選択肢を増やすためにも、注目していきたいと感じます。

仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

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