外国人家事労働者受け入れを日本とフィリピンの視点で考える

20161024_ono_0.jpg女性の活躍推進で働く女性を応援するためには、女性の家事負担の軽減が不可欠であるとして、安倍政権は「国家戦略特区(大阪・横浜)」での外国人家事労働者の受け入れを解禁しました。
今回の規制緩和では、家庭で外国人家事労働者を雇うのではなく、パソナ、ベアーズ、ポピンズ、ダスキンなどの家事代行業者が外国人労働者を最長3年間という期間限定で直接雇用して、各家庭に派遣するという仕組みになっています。

ここ数年で家事代行サービス業者が増え、一般家庭にとって、家事のアウトソースが現実的な選択肢になりつつあるという話はよく聞きますが、それは本当なのでしょうか? シンガポールや香港などのように、日本でも家事を外国人に頼む時代は来るのでしょうか?

今回、外国人家事労働者を受け入れる側と送り出す側の両方の視点から、現状と課題を知り、ディスカッションするワークショップがあると知り、参加してきました。

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9月16日に開催された「外国人家事支援人材の実態を知って、考えよう~日本とフィリピンを結ぶ視点から~」。登壇されたのは、右から、EDAYA代表の山下彩香さん、国境なき対話プロジェクト代表・藤原愛さん、そしてモデレーターのEDAYA・稲葉哲治さん。

性別役割分業観、価格の高さがネック!?

家事代行サービスは、日本ではどれくらい利用されているのでしょうか?

野村総合研究所による試算では、2011年時点で300億円だった家事代行サービスの市場規模は、今後、約6倍の1,720億円まで膨らむことが見込まれている一方で、同社が2014年に実施した「家事支援サービスに関する利用者アンケート調査(2014年)」によると、実際に利用したことがあるのは約3%に留まっているそう。

利用しない理由として、
・価格の高さ
・他人を家に入れることへの不安
・家事を人に任せることに対する抵抗感
などが挙げられています。

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図は、マイナビニュースより抜粋

つまり、現在は高所得層のためのサービスという側面が強く、たとえ利用できたとしても、家事のアウトソーシングに抵抗を持っている人が多い、というのが日本の現状といえそうです。

外国人労働者の受け入れ体制は十分なのか?

次に、外国人家事労働者の立場から、その労働環境を見てみましょう。

外国人家事労働者は、その仕事内容や就労形態から「vulnerability(リスクにさらされやすいこと、影響を受けやすいこと)」の高い労働者であるとされています。実際、住み込みで雇うことが原則となっている香港やシンガポールでは、暴力やハラスメント、労働時間過多などさまざまな問題が浮上しているといいます。そこで「家事労働者」の権利を守るべく採択されたのが、国際労働機関(ILO)の「家事労働者の適切な仕事に関する条約」(189号条約)です。しかし、日本はまだこの条約に批准していません

また賃金は、日本人と同等以上を保証するというようにはなっているものの、実際は、月給から住宅費、研修費などがもろもろを引くと、手取りでは6万円程度になるという試算もあるそう。これは、香港の「住み込み」で働く外国人家事労働者と同程度だという見方もあるようですが、それは住居も食事もすべてまかなわれているのが前提の話。

これでは、受け入れ体制はまだ十分に整っているとはいえないのではないでしょうか。

出稼ぎは、自分の道を切り開く第一歩

では、家事労働者を送り出すフィリピンの状況はどうなのでしょうか。

フィリピンでは近年、コールセンター事業などのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業が大きく成長していますが、近隣諸国に比べて政治が不安定で治安が悪いといった理由で外国からの直接投資が少なく、雇用創出が不十分で失業率が高くなっています。教師や看護婦など資格を持っていても国内では就職できず、国民の10人に1人は出稼ぎに出ているという数字もあるとか。

そんな状況でも、経済成長率がASEAN主要国の中でトップクラスなのは、出稼ぎ労働者からの送金で個人消費が活発だから。国自体も出稼ぎを推奨していて、出稼ぎをコーディネートするエージェントも多数存在するそうです。出稼ぎ先の国としては、外国人家事労働者のコミュニティが発達している香港やシンガポール、そして差別のないアメリカ、ヨーロッパなどが人気とのこと。

「ひと昔前は、ジャパユキという言葉があったように出稼ぎにいくことはネガティブなイメージだったが、今は違う。国内にいても仕事がないので、海外へ出て生きる道を自らの切り開いていくことはキャリアステップのひとつと考えられている。大きな野望を持って出稼ぎを選ぶ学歴ある若者も多い」と山下彩香さん。

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それまで自分が思い描いていた「出稼ぎ」のイメージが覆され、むしろ「日本は外国人家事労働者たちに選ばれる、魅力的な国なのだろうか?」という疑問さえ湧いてきました。

家事代行サービスの普及で、働く女性はラクになるのか?

近年、性別役割分業観を改めてパートナーと家事分担を促進したり、asmamaタスカジなどのサービスに見られるシェアリングエコノミー型サービスが登場したりしている中、今後、日本で家事代行サービスはどのように普及していくのだろうか? 外国人家事労働者が安心して働ける魅力的な労働環境を整えていけるのか? そして、外国人労働者を受け入れることによって、国内労働者の雇用を圧迫することはないのか? など問題はかなり複雑です。

「女性が働きやすい社会にどう向かっていくのか」。
今後の動向にますます目が離せないと思いました。

オノリナ

Writer オノリナ

合同会社カレイドスタイル代表・リズムーン主宰
女性向けWebメディア編集、フリーランスを経て設立。国内外のネットワークを活かして最適なチームを組みながら、研究機関のサイエンスアウトリーチ支援や、企業オウンドメディアのコンテンツ企画・制作を数多く手がけている。「しなやかに、自分らしく」働き、生きる女性のためのコミュニティ「リズムーン」でイベントやセミナーを不定期に開催しているほか、働く女性のためのコンセプトショップ(2019年春オープン)事業を展開。プライベートでは、3人の子を持つワーキングマザー。趣味は卓球。

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