Vol.04 子育て支援コーディネーター 市川望美さん

Profile

子育てしやすい街づくりを目指す「NPO法人せたがや子育てネット」理事、育児支援に関するコンサルティングを手がける「アミーゴプリュス合同会社」代表として、地域や産前産後に特化した子育て支援事業に取り組む傍ら、オーラソーマを中心としたカラーセラピーを提供する「コズミック*スマイル」を主宰。

市川さんのブログ
~はればれといこう~ 子育てはハンディじゃなくキャリア!はたらくを創造しよう。☆cherryの日記。

産後、初めて意識した「地域」で出合った子育て支援の現場

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市川さんの活動の原点となった東京都世田谷区にある「子育て支援グループamigo」の事務所にて。amigoは、世田谷区社会福祉協議会の助成を受けた子育てサロン第1号として2001年にスタート。現在このような子育てサロンは、区内に80箇所以上ある。

 2人の子育てをしながら、あるときはNPO法人の理事や会社代表として世田谷区を拠点とした地域の子育て支援に取り組み、あるときはカラーセラピストとしてオーラソーマのセッションを自宅や出張で提供する。多方面で活躍する市川さんが、現在の仕事スタイルに至るきっかけはなんだったのだろうか?

 短大卒業後、入社したIT系企業で仕事にやりがいを感じ、一般職から総合職への転換社員第一号として精力的に仕事に取り組んでいた市川さん。毎日夜遅くまで働き、充実した毎日を送っていたが、結婚、妊娠を機に"この会社でずっと働き続けることができるのだろうか"と不安を抱くようになったという。

「会社には子育てしながら働いている先輩はたくさんいましたが、実家が隣で祖父母に育児を任せっきりだったり、夕方17時になると"仕事を持ってこないでオーラ"を出していたり......(笑)。"あの人のようになりたい"と思えるモデルがいなかったんです。同時に、事業部の広報という仕事内容にも息詰りを感じていて。私のようにキャリアに悩む社員一人ひとりの才能を活かせるような組織作りがしたくて、産休明けは人事部に異動願いを出そうかなとも考えていました」

 「一年かけてゆっくり考えてみよう」と悩みを抱えつつも産休に入り、2002年に第一子を出産。育休期間をそれなりに満喫していたある日、友人に誘われて足を運んだのが、東京都世田谷区にある「子育て支援グループamigo(以下amigo)」だった。

「amigoの存在は知ってましたが、当時の手作り感たっぷりのホームページの雰囲気が正直苦手で(笑)。友人の誘いがなかったら出かけてなかったかも。でも、実際に訪れてみると、警戒していた"ファンシーなママの世界"はなく、母になっただけの普通の大人の女性たちが淡々と運営していて、ホームページとのギャップを大きく感じました。あと、妊娠中の人が講師をしていたり、小さな子どもをスリングで抱きながらスタッフとして働いていたり。それまでは"仕事か育児か"みたいな考えしかなかったので、"子連れで働いている"ということにもものすごく衝撃でした」

 住んでいる地域に日常的にふらっとでかける場所があり、そこに集まった子育て中の女性との会話を楽しむ。「子連れで遊ぶこと」や「地域で子育てすること」の楽しさを知るにつれて、amigoの活動にも次第にとけ込んでいった。

直感でキャリアをリセット。育児支援、カラーセラピストの二足わらじに

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 「育休中だし、事務仕事ならお手伝いできますよ」という軽い気持ちでamigoの活動に参加するようになった。すると、子育て中の女性が集まる場を提供するだけではない、別の一面があることが見えてきたのだそう。「時々、行政やNPO団体の人など、いろいろな地域の老若男女が集まって、何やら難しい会議をしていたり、当時代表だった松田妙子さんがどこかに呼ばれて講演していたり、新聞の取材が入ったり。amigoの活動の先にどんな世界が広がっているんだろう、とだんだん興味が湧いてきたんです。会社に復職しても、前と同じようにバリバリ仕事ができない自分に"はがゆさ"を感じるのは確実だったし。"ここでナニカ楽しいことができるかも"という自分の直感に従って、9年間の会社員生活にピリオドを打つことを決めました」

 週3〜4日、スタッフとしてamigoで活動するようになってすぐに第二子妊娠が発覚。ちょうど代表の松田氏も第三子妊娠中だったこともあって、区の助成金を利用して『ニンプ向けココロと体のセルフケアハンドブック』を企画・編集して配布するなど、活動的な妊婦期間を過ごした。同時に、「わたしが提供できる専門性を身につけたい」という思いから、オーラソーマを学び始めることに。

 「家族の助けを借りながら、週末に開かれていた講座に約半年間通って資格を取りました。私の場合、amigoという"場"があって、そこに子育てやワーク・ライフ・バランスなどに悩みを抱える女性が集まっていて。『彼女たちのために何か役に立てるのではないか』という具体的なイメージがあったので、躊躇せずに飛び込めたんだと思う。自分のことを振り返ってみても、出産・子育て経験を通して自分の価値観が少しずつ変化したときに、それをうまく拾って繋いでくれた人がまわりにいたんですよね。そういうきっかけづくりがオーラソーマでできるのではないかと思ったんです」

 第二子出産後は、amigoでの活動に加え、子育て中の女性のための癒しサロンを友人と開き、オーラソーマのセッションを行った。しばらくは、子ども2 人を連れての活動だったが、amigoスタッフやまわりの人と互いに子どもの面倒を見合うなど助け合いながらだったので、それほど大変ではなかったのだそう。その後、子どもの成長にあわせて、一時保育やスポット保育を利用しながら活動時間を増やして行った。

"産前産後の支援"という専門分野に新たな価値をプラスしたい!

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NPO法人せたがや子育てネット」が運営する「コミュニティカフェ ぶりっじ」は、商店街と行政とNPOのコラボレーションで生まれたカフェ。市川さんは週2 日、スタッフとして働いている。ここでは、保育つきの講座や子育てサロンに参加したり、自分のスキルを活かして講座やワークショップを開催することも可能。上の写真は、「カメラのキタムラ」とのコラボレーションで開催された「携帯からつくれるフォトブックづくり講座」の様子。

 amigoで活動を始めて3年ほど経ったころから、次第に「子育て中の女性にとって居心地のよい場所づくりだけでなく、そういった居場所を増やすための地域社会の仕組みづくりに関わりたい」という想いが芽生えはじめてきた市川さん。「本腰を入れて活動したい」と保育園に申し込んだところ、運良く半年待機で2人を預けられることに。2006年4月、毎日安心して子どもを預けながら活動に打ち込める新生活がスタートした。

 ちょうどその頃、「NPO法人せたがや子育てネット」の拠点となる「コミュニティカフェ ぶりっじ」の立ち上げや運営に深くかかわるようになり、監査から理事へと立場も変わってきた。NPOの活動として、子育て交流の場づくりやまちの活性化に取り組むほか、女性の創業支援プロジェクト「Baby Steps」では、子育てと仕事のバランスをとりつつも、アイディアを磨いて実践・経験し、仲間とともに成長する場を提供している。

 さらに2007年には、amigoで蓄積された産前産後の専門性で新たな事業領域を作り、従来の育児支援に新しい価値を付加することを目指した「アミーゴプリュス合同会社」を設立。産前産後のケアビジネスや、地域に根ざした子育て支援を推進したい自治体・企業へのコンサルティング、NPOの立ち上げ支援、研修、講演を通じた人材育成を、"当事者発信型・循環型"という視点で取り組んでいる。「amigoという現場から得たノウハウや知恵を、NPOやアミーゴプリュスの活動を通して社会に広め、浸透させていきたい」と市川さんは話す。

 預かり合い、一時保育、スポット保育、保育園と子どもの成長に合わせてスタイルを柔軟に変化させながら、自然な流れの中で自分が最も輝けるワーキングスタイルをみつけた市川さん。「今後は、産前産後、ワーク・ライフ・バランス、女性の生き方などをテーマにした事業をおこし、100年、200年とそのスピリッツが受け継がれるような仕事を生み出したいです」

ある一日のスケジュール

07:00 起床
07:30 朝食、家事をしながら身支度
09:00 保育園に子どもを送りつづけたあと、下北沢にある「コミュニティカフェ ぶりっじ」へ
10:00 「ぶりっじ」のスペースを個人で借りてオーラソーマのセッション
13:00 昼食
13:30 NPO法人せたがや子育てネットのメール対応など
15:00 打ち合わせを兼ねて友人とお茶
16:00 再び「ぶりっじ」に戻り、amigoのスタッフ会議
18:00 メールチェックなど残り業務をこなす
19:00 保育園へお迎え
19:30 夕食
20:00 自由遊び時間。市川さんはパソコンに向かう
21:00 子どものお風呂のお手伝い
22:00 子ども就寝後、お風呂でゆったり読書、仕事、ブログ更新、メールチェックなど
24:00 夫帰宅
01:00 就寝

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

会社員時代と大きくかわったことは?
仕事への考え方ややりがい、仕事の価値の見出し方とコスト意識です。現在、収入的には会社員時代の1/5程度になっていますが、本の購入や研修への参加といった自己研鑽のための経費はしっかり確保できているので、今は投資の時期とも思っています。そして以前よりも「仕事を見渡してマネジメント」している意識は強いです。NPOの活動からは、社会資源を最大限に活用した経営やマネジメントについて学べたり、国や自治体との関わりや協働を通して、経済活動以外の視野が広がりました。お金にはかえられないプライスレスな体験ができ、子育て支援事業という分野に新しい価値を作り出していくことに大きなやりがいを感じています
収入を得る上で心がけていることは?
一番大切なことは安易に時間給で換算しないことです。専門性の安売りはしたくないけれど、ボランティアだからできる、ボランティアでもやるべきことがあるのも事実。自分の仕事の意義と価値のバランスを見極めて、自分たちがお金を得ると決めた仕事からはお金をいただくことを意識し、交渉するようにしています。社会貢献と事業をきちんと捉えて誇りをもつことが大事です。
オンとオフの切り分け、仕事のボリュームコントロールはどのようにしていますか?
会社員を辞めたとき、次に仕事をするときはライフワークとなるものをやりたいと思っていたのですが、いまはまさに「ライフがワーク」です(ある講演会で聞いた言葉で、まさにそう!と思いました)。私の場合、自分の活動がそのまま自分の子育てや地域に役立つので、毎日の暮らしの中に仕事が入り込んでいる感じ。今はボリュームあふれぎみで活動していますが、セルフケアの仕方を身につけているし、いざというときに頼れる人もいるので、安心して仕事に打ち込むことができます
好きな言葉は?
2005年にスタンフォード大学の卒業式で、スティーブ・ジョブズが行ったスピーチの「点と点を繋ぐ(CONNECTING DOTS)」という部分。「(略)未来に先回りして点と点を繋げて見ることはできない、君たちにできるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。(略)点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必ずひとつに繋がっていく、そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きていくことができる」
市川さんのような働き方を目指している人へのメッセージ
一人ひとり持っているものや置かれている環境は違うので、まずはそれらをよく知り、愛着を持つこと。そうすることで、いろいろな価値をみつけることができ、可能性が広がっていくと思います。また、この世界「やってナンボ」だと思います。入念な準備よりも、まずはじめてみて、そこからつくり続けていく、向き合い続けていく努力が自分を助けてくれます。たくさんの人の力を借りて、自分の可能性をさらに広げていくことも大事だと実感しています。

地域+子育て支援という専門性をもって、
自分らしい生き方、働き方を目指す女性を応援

オノリナ

Writer オノリナ

合同会社カレイドスタイル代表
心を動かす価値ある情報やモノをキュレーションして届けたい!という想いのもと、国内外のネットワークを活かして最適なチームを組みながら、企業のメディア運営やサイト制作、ECストア「24rhythm」などのWeb関連事業を手がけています。人生を欲張りに味わい尽くしたい3児の母、リケジョWeb編集者。趣味は卓球。

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