Vol.12 日伊間企業コンサルタント 丸山みほ、さん

Profile

イタリアのカラブリア州在住。日本、イタリア間の企業や公共法人のコンサルタントとして活動する傍ら、自宅の敷地内にある自然栽培農園のオリーブから搾油した「ガッティ家のオーガニックエキストラバージンオリーブオイル」を製造・販売している(こちらで購入できます)。

丸山さんのブログ
とぽら通信

ファッションの仕事を求めて、 22歳で、本場イタリアへ

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カラブリア州は、ナポリの南、長靴の地形をしたイタリア共和国の先端に位置する州。ティレニア海とイオニア海に挟まれ、美しい海岸線と山に恵まれた土地で、シチリアヘの玄関口ともなっている。古代ギリシア時代の植民地としても知られ、紀元前の文化を今に伝える遺跡などが多く点在している。(画像は Wikipediaより)

日本、イタリア間の企業や公共法人のコンサルタントとして、世界を股にかけて活躍するキャリアウーマンでありながら、イタリア・カラブリア州で、自然にとけ込むようなオーガニックライフを楽しんでいる丸山みほ、さん。仕事三昧の日々を経て、現在は、仕事を少しボリュームダウンしながら、2歳になる息子の子育てとの両立を楽しんでいるクールなワーキングマザーでもある。

丸山さんがイタリアと接点を持ったのは、学生時代のアルバイトがきっかけだ。ファッションショーのプランニング会社でアルバイトを経験し、「将来は、ファッション関係の仕事につきたい」と思うように。大学卒業後、ファッションについて学ぶために本場イタリアへ渡り、フィレンツェを拠点に語学学校に通ったり、現地で開かれるファッションショーでアルバイトをしながら、学校探しをしていた。

しかし、現場で得た仕事の楽しさが忘れられず、語学学校中心の生活に物足りなさを感じた丸山さんは、「早く働きたい!」と約1年で帰国。その後、アパレル商社に入社し、誰もが知るイタリアのアパレルブランド担当として、商品のライセンス業務や輸入に携わった。朝早くに出社し、終電後まで働く毎日。時差の関係で、現地スタッフと夜中に電話でやりとりすることも多かったそう。「やりがいのある仕事でしたが、残業が明け方まで続く生活で、とにかく疲れていて......。疲れが麻痺した状態でした」

そんなときに、日本で久々に再会したのが、語学留学時代にイタリアで知り合った現在の夫・ジョヴァンニさんだった。疲れきった丸山さんの様子を見て、ジョヴァンニさんは「イタリアにきて、もう一度試してみれば?」とアドバイス。その一言が丸山さんの心を揺れ動かし、いろいろ悩んだ末、もう一度イタリアへ行くことを決意する。「イタリア語が中途半端だったこともあったので、ビジネスで使えるくらいまで身につけたいなあという気持ちもあって。そのときはもちろん、彼との結婚は考えていませんでした。とりあえず行ってみて、何か仕事のきっかけが掴めれば......という気持ちでした」。このとき丸山さんは、25 歳。人生の大きな転機が訪れたのだった。

地元食材の魅力を再認識。意外な出会いでチャンスを掴む!

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イタリア南部、地中海に面したカタンツァーロ県スタレッティ市コパネッロにある岬に建つ丸山さんのご自宅。家の基礎部分は15世紀以上も前につくられたものなのだそう。家を取り囲むように広がる丘陵には、約1000本のオリーブ畑が広がっている。

イタリアでファッションといえば、ミラノ、フィレンツェをはじめとした北イタリアの都市を思い浮かべるだろう。でも、丸山さんが移り住んだのは、ジョヴァンニさんの故郷である南イタリア、カラブリア州にある田舎町だった。

「イタリアに来て、まず、仕事探しから始めました。複数のブランドメーカーとコンタクトを取ったのですが、アジアの市場を拡大するために、私をアジア諸国へ派遣したいという条件だったのでお断りし、フリーランスでコーディネーター的な仕事を始めたんです。北イタリア方面での仕事が多かったので、よく出張していました。そのうち、地元ワイナリーの社長から『私のワインを日本に紹介してほしい』と言われたのがきっかけで食品の世界へ。そこから、地元の企業と関わりを持つことになったんです」

丸山さんは家政学科で学んでいたため、衣服だけでなく、食についても知識のベースがあり、業務を食品に広げることに違和感は感じなかったという。その後は、日本市場への進出を狙う企業のコンサルタントとして、ワイン、リキュール、パスタといった食品類も扱うようになった。

そんなあるとき、出張先へでかける飛行機の中でカラブリア州知事と席が前後になり、話をしたのがきっかけで、州のコンサルティング業務を担当することに! 大使館の協賛で、日本の大手商社を相手に、州の特産物を日本へ紹介する広報活動を展開した。それを機に、日本の商社と業務委託契約を結び、イタリア食材の買い付け窓口になったり、日本企業からの依頼でイタリアの市場調査をしたり、食品工場の見学・レポートを作成するなど、幅広い業務を手がけるようになった。なんと、セリエAにいたころの中村俊輔選手のイタリア語の講師をしていたこともあるのだとか!

この地ならではのオーガニックライフを味わい、発信していきたい!

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農園から収穫されたオリーブの実で作られるオーガニックエキストラバージンオイル。殺虫剤・除草剤などの農薬を使用せず、土本来の力だけで育てる自然栽培法によって栽培されている。自然の恵みが凝縮したフレッシュな風味が人気。
こちらで購入できます>>

イタリア中を飛び回りながら、バリバリと仕事をこなしていた丸山さんだが、ある時ふと「この先も、仕事三昧の毎日でよいのだろうか」と疑問に思うようになった。「せっかく素晴らしい土地に住んでいるのに、それをじっくり楽しむ余裕がなく、仕事優先の日々を送っていました。子どもを産むことを考えると、今がタイミングかなと思って」

ちょうど大きな仕事が一段落したのを機に、丸山さんとジョヴァンニさんは、2005年秋に入籍。その後、仕事をボリュームダウンしながら、2007年に長男を出産した。「でもやっぱり仕事は気になってしまって、実は出産直前までベッドの上でパソコンを立ち上げて仕事をしていました。取引先の中には、いつ出産していたのか知らなかった、という人もいたくらいで......(笑)」

現在は、息子との時間を大切に過ごしながら、これまでのコンサルティング業務のほか、イタリアの有機JAS認証団体代理人なども手がけている。日本とイタリアの橋渡し役として、さまざまな仕事にチャレンジしている丸山さんだが、今後は、もっと肩の力を抜いて心穏やかに過ごしながら、この場所で生活している意味を見いだしていくことにも注力していきたいのだそう。

「日本から来てすぐのときは、今のようにインターネット環境も整っていませんでしたし、孤独や不便さを感じることも多かったこの土地ですが、今は日々の生活を通して、素晴らしい魅力に満ちた地域であることを日々実感しています。子どもが産まれるまでは、忙しすぎて、じっくりこの土地ならではの生活を味わうことが少なかったかも。これからは、敷地内にある遺跡やオリーブ農園を巡るツアーを企画したり、エキストラバージンオリーブオイルを使った石けんづくりや、農園でつくったはちみつを使ったリキュールづくりなど......。夫や息子と支え合いながら、代々ファミリーから受け継いできたこの土地ならではの付加価値を生み出すことにチャレンジしていきたいと思っているんです」

ある一日のスケジュール

07:00 起床。家事や朝食の準備
08:30 テレビで日本のニュースを見ながら朝食
09:00 仕事スタート。その間、息子と散歩に出かけたり、買い物に行くことも
13:00 昼食の準備
14:00 夫も一時帰宅して、昼食
15:00 子どもが昼寝中に、仕事を片付ける
19:00 夕食の準備
20:00 夕食語、家族団らん
22:00 子どもと一緒にお風呂に入る
22:30 子ども寝かしつけ後、仕事、または自由時間
24:00 就寝

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

今のワークスタイルのメリット、デメリットは?
仕事を自分でコントロールできること。夫も会社を経営しているので、どちらか出張の予定が入ったときには、互いになるべく調整して、家族3人ででかけるようにしています。これは、夫も自営業ならではのメリットかも。デメリットは、やはり収入が安定しないことですね。
収入安定のために大切なことは?
頼まれた仕事は、ていねいに仕上げるようにしています。そして、長くお付き合いしてくださるビジネスパートナーとなれるよう、信頼関係を築くように心がけています。
イタリアでの夫の子育て参加度は?
イタリア人男性には珍しく(!?)、夫は家事や子育てに積極的に参加してくれるので、とても助かっています。可能な限り、自分で育てたいという思いがあるので、日中は、息子を保育園に預けず、一緒に過ごしながら仕事をしていますが、どうしても仕事に集中しなければならないときは、近所の方に預かってもらうこともあります。
イタリアで暮らして、日本にいたときとは大きく変わったことはなんですか?
理不尽なことが多く、日本ではあり得ないようなつらい思いを経験したので、打たれ強くなりました(笑)。多少のことでは動じなくなりましたね。あと、物事によっては大雑把に済ますことができるようになりました。
丸山さんのように、自分で道を切り開いていくために心がけていることは?
「何事もなんとかなる、問題が起きても必ず解決する」と信じていること。一人ひとり、環境や条件、状況が異なるので、自分が置かれた場所で自分なりの解決方法を見つけて行くしかないのではないかと考えています。自分の子どもや家族のことを考えると、自ずと道ができてくるのではないでしょうか。人に左右されず、いろいろと先のことを考えすぎないのも、前進するコツかもしれません。

南伊でオーガニックライフを楽しみながら、
日本との橋渡し役として活躍

オノリナ

Writer オノリナ

合同会社カレイドスタイル代表
心を動かす価値ある情報やモノをキュレーションして届けたい!という想いのもと、国内外のネットワークを活かして最適なチームを組みながら、企業のメディア運営やサイト制作、ECストア「24rhythm」などのWeb関連事業を手がけています。人生を欲張りに味わい尽くしたい3児の母、リケジョWeb編集者。趣味は卓球。

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