Vol.47 オステオパス 大迫由香さん

Profile

大学卒業後、テレビ局や出版社に勤務。フリーランスの編集・ライターを経て、28歳の時にオステオパシーを習得するため専門学校に入学し、在学中はアメリカの医科大学でインターンとして実地研修も経験する。卒業後は米国オステオパシー医師会が提示した国際基準資格の日本版、「MRO(J)」を取得。サロンを開業して2年、クライアントは幼児から80代と幅広い。

サロン「Y's OSTEOPATHY」
大迫さんのブログ

「どうして病気になったの?」素朴な疑問から全ては始まった

オステオパシーとは、骨格のゆがみだけでなく筋肉やリンパの流れ、神経など体をつくる全組織の調整を行う整体の一種である。体のリズムや歪みを正し、人が本来持っている自然治癒力の向上を手助けするという。アメリカでは、オステオパスは医学認可を受けており、医師として活動することができる。

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ブラウンを基調にしたシンプルでぬくもりのあるサロン。天然杉を敷き詰めた床板からはほんのりと木の優しい香りが漂う。裸足で歩くとその心地良さも体感できる。

テレビ局、出版社、フリーの編集・ライターとマスコミの世界で活動してきた大迫由香さんは、全くの未経験でオステオパシーという異業種に飛び込んだ。「職種があまりに違うのでびっくりされることも多いですね。でも『人に喜んでもらう』という部分は同じだと思っているので、そんなに思い切った決断だとは思ってないんですよ」と笑う。

きっかけは、出版社に勤めていた25歳の時。健康診断で卵巣膿腫が見つかったのだ。「急なことで、言われるがままに手術を受けました。術後、先生に『何で病気になったんですか? これから何に気をつけたら健康でいられますか?』と尋ねたところ『分からない』と具体的なアドバイスはもらえませんでした。医者は病気の治療はしてくれるけど、健康にしてくれるわけではないんだな〜って。そこから体に興味を持つようになり、さまざまなセミナーに参加するようになりました。分子栄養学の第一人者、森山晃嗣先生の栄養学のセミナーを受講したとき体の構造を勉強する回があり、そこでオステオパシーと出合ったんです」

前職と平行しつつ専門学校へ入学。新たな一歩を踏み出す

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体の声を聞くように、背中から腰へ、腕を前から後ろへと丁寧に動かしていく。「胃のあたりがが張ってますね」「ちょっと体調が......どうして分かるんですか!」と、大迫さんの診断にびっくり。

「初めてオステオパシーの施術を受けて自律神経の調整をしてもらったとき、体の反応として涙が出てきて止まらなくて。腰痛持ちでカイロや整体などいろいろ通っていたのですが、こんなアプローチは初めて!と感動しました」

ちょうど出版業界が不況になり始めた頃、このまま編集・ライター業でやっていけるのだろうか......という不安もあり、思い切ってオステオパスを目指すことにしたという。「預金がないのに4年制の専門学校に入学したので、学費+生活費を捻出するために昼は学校、夜は原稿書きという生活であの頃が一番疲れていたと思います(笑)。でも全然苦ではなかった、好きなことをしているわけですからね」

卒業後、サロンやマッサージ店に勤めて修行し、その後独立という選択をする人が多い中、大迫さんは迷うことなく独立・開業の道を選んだ。「もともとフリーランスだったこともあり、最初から独立することへの不安はなかったですね、最初ヒマなのは当たり前!って思っていました。オープンしたての頃は、お客様が1日一人いらっしゃるかどうか。友だちに『来てね』とメールして、施術を気に入ってくれた人がさらにクチコミをしてくれて......というようにお客様が増えていき、半年ほどで運営が軌道にのるようになりました」

ヘルスケアのプロとしてお客様と向き合っていきたい

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大迫さんのこだわりが、カラフルなユニフォームの着用。「アメリカの看護師さんが着ているユニフォームなんですよ。赤ちゃんが来店する時は動物プリントにしようかな〜と、選ぶ楽しみがありますね」

大迫さんのサロンは60分5000円(初めての方は初見料3,000円がプラスされる)・延長料なし、という価格帯も魅力のひとつ。このような価格を設定した理由を聞いてみた。


「最初は経営コンサルの本を読んだりしたのですが、お客様に喜んでいただくことを最優先に考えました。手技業界の基準である10分1000円より価格を下げたかったんです。体調の不具合を整えるまでには時間がかかります。何度も通っていただきたいので、お客様が無理なく通える価格にしました。営業活動はWebサイト、名刺、チラシを自作したことぐらい。Webサイトは難しいことはできないし、シンプルに分かりやすい内容を心がけました。あとは、お客様とじっくり向き合い、心を込めて丁寧に施術すると信頼関係が生まれてくる。それが次に繋がって......という感じで、工夫は本当にそれだけなんですよ」

より良いサービスを提供するために、技術・知識の向上にも余念がない。定期的に海外で開催されるセミナーへの参加をはじめ、栄養学、心理学、コーチングなどの専門書を読んだり講座へ通うこともあるそう。

vol47_3.jpg 「私は身体も心もあわせて『健康であること』のお手本でありたいので、技術・知識を磨くのはオステオパスとしてあたりまえのことだと考えています。オステオパシーは治す医療ではなく予防医学の一種。ご本人に予防医学について理解してもらい、その家族全体の生活習慣、運動状態、食生活などの状態をみて『健康になるための』アドバイスをしていけたらいいなと思っています。親子三代で通ってくださる方もいらっしゃるんですよ。お客様の健康の相談役としてこれからも信頼関係を築いていきていですね」

大迫さんのある日のランチ

vol47_6.jpgがんや糖尿病など、症状にあわせた栄養補給の為の料理教室を下の階にあるNPO団体が主催していて、お裾分けをいただくことも多いそう。材料も調味料も完全オーガニック。栄養を壊さないこだわりの作り方をしているとか。

ある一日のスケジュール

08:30 起床
09:00 出勤
09:30 サロンの掃除、メールチェックなどオープン準備
10:00 営業開始
13:00 だいたい2名の施術が終わる時間帯にランチ。忙しくて休憩がとれない日もあるそう。「同じビル内で料理教室があったりすると、おすそわけをいただくこともあるんですよ」
14:00 営業再開。3人目の顧客が来店
19:00 営業終了。一日平均5名の施術を行う。休日は不定期。「なぜか疲れている時は予約が入らないんですよ(笑)」
20:00 後片付け、カルテ整理をしてサロンを出る
20:30 帰宅。自宅近くの天然温泉に寄ることも。
21:00 30分で準備し夕飯。夕食後はゆっくりお風呂につかったり、TVやDVDで海外ドラマを観たりとリラックスタイム
24:30 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

温泉に行くのが大迫さんのパワーの源。写真は甥っ子と温泉に行ったときのもの。「すごく疲れた日は、自宅近くの天然温泉にいくこともあります。メディカルハーブを勉強しているので、自宅では生のハーブやアロマオイルを使った自家製の入浴剤を入れたりしています」。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

ONとOFFの切り替えのコツは?
仕事を自宅に持ち込まない、気になる症例など調べものもサロン内でその日の内に完結させる。プライベートなことは自宅で、仕事はサロンでと場所を変えることで気持ちを切り替えています。
サロンを運営する上で気をつけていることは?
直接お客様の体に触れるので、疲れていると手から伝わってしまうんです。ですので、一日に施術する目安を5人までとしています。あとは私自身が健康であること! これが一番ですね。
今の働き方に影響を受けた経験は?
在学中にアメリカで3ヶ月のインターンを経験したことが人生の転機となりました。研修先のドクターたちが仕事終わりにサイクリングに行ったりと、プライベートの時間も大切にしていたんですね。それまでガツガツ働いていたのですが、ペースを変える、自然と触れあうなど自分を見つめる時間や心に余裕を持つ大切さを知りました。考え方が180度変わりました。
座右の銘は?
「They will be teaching you all the rest of your life, if you will listen」君が聞こうとさえすれば、お客様(患者さん)が人生の全て教えてくれる。つまり、お客様は自分の鑑だということなんです。アメリカでのインターン終了時にいただいた、オステオパシー界で世界的にも有名なDr.ザッカリー・コモからの言葉です。
フリーランサーを目指す人へのアドバイス
戦える武器を持ってください。コレだ!って思えるものに出合ったら、お金をかけてでも身につけた方が良いですね。あとは人脈、人とのお付き合いでしょうか。サロン開業も周りの人に助けていただいたので、人とのご縁の大切さというものを感じています。

きっかけは自身の手術体験。
編集・ライター業からオステオパシーの世界へ

須磨ますみ

Writer 須磨ますみ

前は編集・ライター、今は会社員+週末ライター。
各種インタビュー、仕事系、グルメ、ウエディングなどの編集・ライティング経験あり。

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