Profile

雑貨店での勤務を経て、2001年6月に自身のブランド『cotylifere(コティリフェール)』を立ち上げる。オリジナルの携帯ストラップやアクセサリー、布小物などを制作。雑貨店への委託販売のほか、Webサイトでもリクエストオーダーを受けている。自身の世界観をより伝えるため、空間ディスプレイにこだわった作品展を多数開催。そのほか、手作り雑貨教室の開催をはじめ、雑貨メーカーの母子手帳ケースや抱っこ紐のデザインを担当するなど、雑貨を中心として、幅広く活躍する。
"好き"から始まる、"好き"から広がる、世界
委託店の雰囲気に似合う雑貨を製作。携帯ストラップなら、小鳥、花、ボタンといったチャームやレースの模様を店ごとに変える
雑貨作家へのみちしるべは、子どもの頃から見えていたという。「小学生の頃、近所の雑貨店でヘアピンを買うのが楽しくって。中学生の頃には雑貨店で働くんだって決めていました」。
その決意どおり、短大を卒業後、家具と雑貨を扱う店を経て、憧れの雑貨店へ。雑貨販売の傍ら、併設するカフェで使うオリジナルのコースターやランチョンマットを手作りしていた。
「スタッフみんなが手作り好きで、いろいろ教わりましたね。一緒に手作り市や雑貨店を巡ったり、誕生日には小さなバッグやポーチを手作りしてプレゼントし合ったり。その時、相手を思いながら作る手作り雑貨はあたたかみがあっていいなあって。そんなあたたかさを多くの人に伝えられたらと思うようになったんです」。作品とその周りの世界観を表現するため、フライヤーなどに使う写真は自身で撮影。ワークショップに参加し、撮影スキルを磨いた。
最初の4年ほどは、生活費を確保するため、アルバイトをしながら、夜や休日など空いた時間で製作。そして"このお店が好きだから、ここだけのオリジナル雑貨を作りたい"をコンセプトに、好きな雑貨店にアタックし、委託先を増やしていく。「ある程度、お金が貯まった時点で、思いきって完全フリーになりました。生活が苦しくなったらアルバイトをすればいいと思って」。
活動を続けるうち、芽生えた使命感。人のつながりに支えられて
雑貨・インテリア系の雑誌で何度も紹介されるほど素敵な住居兼アトリエ。好きなもの、いとおしいものに囲まれて、製作に励む。
そんな気持ちに疑問を抱き、1度だけ、雑貨作家を辞めようと思い悩んだことがあるという。それは環境問題について書かれた本を読んで、地球への危機感を抱いたことがきっかけだった。
「好きなことを仕事にできるのは素晴らしい。でも、好きなことだけをやっていていいのかなって。確かに、自分のことだけではなく、"人に喜んでもらえる雑貨を作りたい"と相手を思った夢を抱いていましたが、その夢って、環境や未来のことを考えたものではない気がして......。本当に、環境や未来のことを考えるなら、植林など直接的な仕事に携わった方がいいのではないかとまで考え込んでしまったんです」。
雑貨を大切に扱ってもらえるように取扱説明書をつけたり、Webサイトや教室で作り手の思いを伝えるように心がけている。
「その時、気づいたんです。私には待っていてくれるお客さんがいる。お客さんを置き去りにはできないって。もともと大量生産される雑貨ではなく、手作り雑貨に注目したのも、物を大切にする心を伝えたいからこそ。1つ1つの物を丁寧に選んで、大切に使い続ける心を伝えることで、未来につながるのではないか。私にしかできない方法で、身近な人たちから伝えていこうと思ったんです」。
その後、小林さんは自作でWebサイトを立ち上げた。そこには、活動の告知をする目的とともに「雑貨を作って、お店に置いてもらって、それをお客さんに買ってもらって......終わりではなく、作り手がどんな思いで作っているのか、知ってもらえる場があったら」との思いもある。
雑貨の先に見える相手の顔、暮らしに思いを馳せて
記念日を彩るコラージュボード。美しいレースやモチーフにうっとり。要望に応じて、世界に一つだけのボードを手作りしてくれる。
2009年からウェルカムボードやリングピローなどを扱う、ウェディングラインをスタートさせた。結婚式を華やかに、オリジナリティ溢れるよう演出するのはもちろん、ウェルカムボードなら、結婚式後はフォトフレームとして写真を飾れるようにデザインして作る。使う相手を、その相手の暮らしを見つめているからこその心遣い。
「何事も自分でやってみたいんです」と小林さん。Webサイトもフライヤーもすべて自身で。スキルは独学。やりながら、スキルを磨いた。
立ち上げ当初から、人とのつながりを大切にしてきた。だからこそ、雑貨作家として10周年の記念日は、作品展ではなく、顧客をはじめ、お世話になった方々を招いてのパーティーを開催。「雑貨を通してご縁のあった方々にお会いしてお礼を言いたい、言葉を交わし合いたい、一緒に楽しい時間を過ごしたいと思ったんです」。
小林さんに今後の展望を聞くと、「やりたいことはたくさんあって!! たとえば、作り手としての私の思いや考えを発信するプライベートブログを復活させたい。あと、東京で個展を開催したいし......」と、10年経った今も、夢は膨らむばかり。
最後に小林さんはこう語る。
「cotylifereの双葉が10周年の今、もし木になっているのなら、止まり木になっていたいと思うんです。いつ来ても、ここにいるという安心できる存在。"活動を休まず、続ける"ことが、大切だと思っています」。
ある一日のスケジュール
09:30 | 起床、朝食、身支度。朝食をとりながら、パソコンを起動させて、メールチェックなど |
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10:30 | 作品製作に取り組む |
14:00 | 昼食orおやつの軽食 |
14:30 | 日中は主に、作品の色合わせやデザイン部分に集中。そのほか、Webサイトやフライヤー用に作品を撮影したり、材料の仕入れに向かう |
19:00 | 夕食の買い物へ |
19:30 | 作品製作に取り組む |
21:00 | 夕食 |
21:30 | Webサイトやメールのチェックをはじめ、写真編集やブログ更新など、Webサイトの更新作業に取り組む |
02:00 | 入浴 |
03:00 | 作品製作またはWebサイトの更新作業に取り組む |
05:30 | 就寝 |
小林さんのモットーは「納得がいくまで、とことん!!」。一日のスケジュールもまさにそう。雑貨製作、写真撮影、Webサイト更新......自分が納得するところまで突き詰めて取り組んで、その合間に、睡眠や食事、家事、入浴などを挟む。住居兼アトリエには、時計を置かず、作業中心で一日が流れていっている。 |
ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ
過去の日記を定期的に振り返りながら、成長しているか、軸から逸れていないかなどをチェック。作品展の記帳ノートに残るお客さんからのメッセージはパワーの源です。クマのぬいぐるみは"へなへな"と言います。癒しです(笑)。
Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問
- 雑貨教室、デザインなどの仕事はどのように開拓しましたか?
- 手作り雑貨教室は、お店の店主さんからお声がけいただいたのがきっかけ。独学で雑貨製作している私が人に教えてもいいのかと不安でしたが、作家として5年の経験があったので挑戦してみました。お客さんに喜んでもらえて。作品展以外でお客さんと会える機会が増えるのは嬉しいと、定期的に開催しています。母子手帳ケースのデザインをするきっかけは、自分の作ったバッグを持っていたら、仕入れ先に居合わせた雑貨メーカーの社長から「そのバッグ、いいね。作ったん?」とお声がけいただいたから......という面白いご縁です。
- 人とのつながりを築く上で、大切にしていることは?
- 名刺をいただいたり、何かでご一緒したら、その後はなるべく、メールを送って自分の気持ちを伝えるようにしています。「今日は楽しかったです」と一文でもいいと思うんです。それをする人と、しない人とでは、その後のつながり方が変わってくると感じています。
- 学びや情報などインプットとアウトプットのバランスは?
- フリーランスって、スケジュールは自分次第。それがメリットでもあり、デメリットでもあると思うんです。この数年、ほとんど休日というものを作れていなくって。過去の日記を振り返ると、以前は雑貨店を巡ったり、ワークショップやイベントに参加したり、いろんな人に会っていました。あの頃に、人脈が広がったからこそ、今につながっていると感じていて、そういう時間をまた作りたいです。
- "休まず、続ける"ことに対するこだわりは?
- フリーで製作活動する人の中には、結婚をして、出産して......いろんな転機があって、活動を休止する人がいます。中には突然、何の報告もないまま、休止している人も。お店ならずっと臨時休業しているような状態ですよね。事情はあると思うのですが、お客さんのことを考えたら、もっと早くに報告できなかったのって思うんです。お客さんに悲しい思いをさせたくないので、Webサイトは常に更新するよう心がけています。もし仮に、事情があって活動を休止することになっても、きちんとお客さんに報告してからと思っています。
- フリーランスをめざす人にメッセージ
- 「これを伝えたいからやるんだ!!」というコンセプトを、揺るがないものにすることが大切だと思っています。私もこの10年を振り返って、10年前から"思い=コンセプト"は変わっていないと思いました。活動をするうちに、深みは増してきたと思いますが、芯の部分は変わっていないんです。芯の部分に、いろんなものをプラスして今があると思うので、最初のコンセプトが肝心だと思います。
好き、使命感、人とのつながり......
それらを大切に、これまでも、これからも