Vol.66 フォトグラファー 多田直子さん

Profile

会社員をしながら写真学校に通い、写真家シヲバラタク氏に師事。2000年より撮影事務所に所属し、ウェディングフォトグラファーとしてデビュー。平日は会社員、土日はフォトグラファーという二足のわらじで約6年間活動を行う。2006年、第一子出産を機に「baron PHOTO WORK(バロンフォトワーク)」を立ち上げ独立。「30年後も新鮮で、当時の楽しい記憶が溢れ出すような写真」をテーマに家族の出張撮影を行っているほか、ママ向けサロンでの撮影会やカメラ講座、撮影を絡めたワークショップなどを主催している。

多田さんのブログ
baron PHOTO WORK(バロンフォトワーク)

一般人の撮影にこだわり、ウェディング撮影で腕を磨く

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baron PHOTO WORK』では、撮影した全データをDVD-Rで納品するが、依頼があれば写真集の制作も行っている。「何年経っても新鮮で、何度も見たくなる写真集」を目指し、デザイナーとともに制作を行っている。

子どもの成長はあっという間だ。特に幼児期の成長はめざましく、毎日違った表情を見せてくれる。そんな子どもの"今この瞬間"を撮影しているのが、フォトグラファーの多田直子さんだ。


現在は、マタニティからお宮参り、子どもの誕生日、七五三などを中心に出張撮影を行っているほか、ママ向けサロンでの撮影会やカメラ講座なども開催している。家族や子どもの自然な表情を捉え、女性ならではのやさしい雰囲気に満ちあふれた写真はファンが多く、これまでに600家族以上の撮影を行ってきた。

多田さんがカメラの道を志したのは遅く20代後半からだという。「きっかけは、当時勤めていた会社で扱う商品をきれいに撮りたくて一眼レフカメラを購入したこと。そうしたら、すっかりはまってしまって」

その後、写真を本格的に学ぶために写真学校に通い始め、プロを目指そうと意識し始めた頃。タイミングよく学校から撮影事務所の紹介を受け、ウェディングフォトグラファーとしての活動をスタートさせることになった。

「事務所には広告やアート写真を撮りたいという人が多かったのですが、わたしは全く逆で、一般の人を撮影したかった。なので、ウェディング撮影の仕事はとてもやりがいがありましたね。写真の仕事だけに専念しようと考えたこともありますが、結婚式は土日に行われることが多いので、平日はあまり仕事がなかったんです。そのとき勤めていたマーケティング会社での仕事が面白かったこともあり、あえて辞める必要もないかなと思い、ダブルワークで活動を続けていました」

平日は会社員、土日はカメラマンというハードワークだったが、働くことが大好きな多田さんはちっとも苦にならなかった。休みがほとんどない生活だったが、毎日が充実していたという。

子どもの誕生をきっかけに独立。出張撮影にこだわる理由は?

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「『自宅は狭いし、生活感があるから素敵な写真が撮れるのかな......』と心配する方も多いのですが、そんなことありません。とくに、そのときに過ごしている家や雰囲気、お気に入りのおもちゃなど、自分を取り巻いて育ててくれたワンシーンを写真に残せるってとても素敵なことだと思うんです。10年、20年たってみんなで写真を見返したときに、楽しくて幸せな記憶があふれ出るような写真を目指しています」

ウェディング撮影から、家族や子どもの撮影へとシフトするきっかけはなんだったのだろう?

「ウェディングで撮影したお客さまの中には妊娠中の方もいて、『子どもが生まれたらぜひ撮影を』と頼まれることが多くなって。そして私自身、2006年に第一子を出産したことで、まわりのママ友から『子どもを撮影してほしい』と依頼されるようになり、『やるなら今しかない!』と思い会社を退職し、カメラ1本でやっていくことに決めました」

多田さんが独立当初からこだわっているのが出張撮影スタイル。"出張撮影では、普段過ごしている場所で、その家族ならではの空気感が引き出せる。その時の気持ちまでうつしこんだ家族写真が撮りたい"と考えたからだ。

今でこそ出張撮影スタイルをとるフォトグラファーは増えてきたが、多田さんが立ち上げた当時はまだ数少かったという。また、依頼側も見ず知らずの人を自宅をはじめとしたプライベート空間に入れることに抵抗がある人も多かった。そのため、ハードルを下げるべく、撮影するのは子育て真っ最中の母親であることを前面に出し、撮影した写真や自身の子育てのトピックなどを積極的にブログに掲載して、安心して依頼してもらえるように工夫したという。

こうして、出張撮影に加え、自身が産後通っていたベビーマッサージの教室や、ママ向けサロンに営業をかけ、撮影会やカメラ講座を開くなど、平日の仕事を増やしながら活動の安定を図っていった。

vol66_3.jpg●屋号「baron PHOTO WORK」の由来は?
屋号にある「バロン」は、子どもの頃好きだった世界名作劇場の「ペリーヌ物語」に登場する犬の名前からとった。「主人公とバロンがロバの引く馬車で移動写真屋さんをしながら旅をする話なんですが、私もカメラ片手にみなさんのもとに出向き、たくさんの表情を撮影したいという想いを込めて決めました」

写真を通じて、子育て支援を行っていきたい

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ママ向けサロンで定期的に開催している授乳フォト。参加者のクチコミで告知する前にあっという間に埋まってしまうそう。

独立して現在4年目の多田さん。写真のクオリティの高さと、他にはないリーズナブルな価格設定で、ママを中心にクチコミで広がり、出張撮影は数ヶ月先まで予約で埋まり、撮影会やカメラ講座は毎回キャンセル待ちが出るほど人気が定着した。

「現在最も力を入れているのが『授乳フォト』です。長男を母乳で育てたのですが、なかなか卒乳できなかったにも関わらず、授乳写真が一枚もなくて残念に思ったことがきっかけで始めました。そうしたら予想通りニーズがあって! これは出産経験のある女性でないと撮れない写真ですよね。授乳まっ只中の方や、撮影を機に卒乳したいという方からご依頼いただいています」

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書道家・永田紗戀さんとのコラボ企画で開催された「はじめての書ワークショップ」の様子。参加した子どもが一人ずつみんなの前に出て、筆と墨汁で色紙に自由に表現するという内容。書いた作品を発表し褒められた子どもたちの、ちょっぴり自信のついた顔を多田さんが撮影する。

最近は、撮影を絡めたワークショップも定期的に開催し、順調に活動の幅を広げている多田さん。最後に、今後の展望を聞いてみた。

「カメラ講座は、私の中では子育て支援のひとつだと思って行っています。今後も、撮影やワークショップを通して、子育て中の女性のために自分ができることをいろいろしていきたいと思っています。また、フルタイムではなく、子どもが幼稚園にいっている間や週に1〜2日だけ働きたいという女性はたくさんいるので、そういった女性たちと母親に特化したチームを作って仕事をシェアしていける仕組みを作りたいですね」

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多田さんのお仕事道具

撮影時に愛用しているカメラとリュック型カメラバッグ。

ある一日のスケジュール

04:00 起床。メールチェック・納品物確認
06:30 朝ごはんの準備
07:30 子どもを起こして朝食
08:30 子どもを保育園へ
09:30 撮影へ
10:00 撮影スタート
13:00 終了後、ランチをしながら打ち合わせ
15:00 帰宅。データのバッグアップや納品物の発送など
18:00 子どものお迎えで保育園へ
19:00 夕飯
19:30 お風呂に入ったあと、子どもと遊ぶ
21:00 こども寝かしつけと一緒に寝る。復活できたときは、25時くらいまで仕事をすることも

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

整体。疲れが溜まってそろそろ限界!というときに駆け込みます。そのときの症状に合わせて3つの整体院を使い分けています。photo/© chiich - Fotolia.com

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

なぜスタジオを持たずに活動を行っているのですか?
出張撮影は移動があるので、一日2件が限界です。自分のスタジオを持てば、撮影件数を増やすことはできるのですが、大切にしている「普段過ごしている場所で、その家族ならではの空気感やその時の気持ちまでをうつしこんだ家族写真が撮りたい」というコンセプトとずれてしまうので、今のところ予定はありません。撮影中に雨が降るなど、いろいろなハプニングを楽しめるところも出張撮影の醍醐味だと思います。
フリーランスという働き方のよい点は?
思ったことをスピーディに展開できること。現在定期的に開催している書道家・永田紗戀さんとの「はじめての書ワークショップ」も、これやりたいな、と思ってすぐに行動し、実現できたことのひとつです。会社員時代、マーケティングの仕事で座談会などを開くことが多かったので、実はイベント企画が得意なんです。
サービスの値段設定はどのように行っていますか?
写真撮影は一年に一度くらいのこととは言え、どれくらいの金額を払えるかというのを主婦目線で考えました。そして、女性が自分の決済で払える値段を設定することで、自然と自分の感覚や価値観と合うお客さまを呼び込めているのではないかと思っています。
オンとオフやどのように切り替えていますか?
基本、土日は仕事があり、休みがあまりないので、オンオフの切り替えはあまりないですね。ただ、月に一日、完全オフの日を意識的に作るようにしています。子どももいるので、プライベートな時間は携帯をあまり触らないようにしたいのですが、お客様から問い合わせが入ることもあるので、なかなかそうもいきませんね......。
リズムーン読者へのメッセージ
「できる」か「できない」かではなく、「やる」か「やらない」かだと思います。そして、「やりたい」と本気で思ったら、それはできるってことだと思います。なにか躊躇することがあるのであれば、まずはやってみることが大事だと思います。

ダブルワークの末、フォトグラファーとして独立
写真を通じた子育て支援活動とは?

Rhythmoon編集部

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