Vol.78 ミシンカフェ&ラウンジnicoオーナー neneさん

Profile

東京都出身。洋裁好きの母の影響で子どもの頃から大の洋服好き。高校時代から渋谷の古着店に通いつめ、卒業後はそのショップで販売員として2年ほど勤務。その後、ある帽子との出合いがきっかけで帽子デザイナーに。友人3名と店舗を構えたり、アルバイトをしながら帽子や洋服をつくりながら作家として活動を続ける。2011年9月、ミシンカフェ&ラウンジnicoをオープン。

neneさんのサイト
「ミシンカフェ&ラウンジnico」

定年退職後の母と一緒に働ける「場」を作りたかった

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neneさんの世界観が広がる店内のカフェコーナー。neneさんの友人が作るイチオシスイーツも販売されている。

人々の息づかいが聞こえてくるような、親しみやすい住宅街の中にあるミシンカフェ&ラウンジnico。店内はミシンや生地がきれいに整理され、自分の出番を静かに待っている。「いらっしゃいませ」と、オーナーのneneさん。柔らかく穏やかな雰囲気で、ニコニコと出迎えてくれた。"ニットカフェ"は聞くことがあっても、"ミシンカフェ"は初めて耳にする人も多いのではないだろうか。


洋裁好きな母の影響でものづくりの道へ進み、ある帽子との出合いをきっかけに帽子デザイナーとして活動をしていたneneさんが、ミシンカフェを開くきっかけはなんだったのだろう?
「実は、10年くらい前から、いつか洋裁好きな人が集まって楽しめる何かしらのスペースを、母と二人でやりたいな、とは思っていました。でもそれがアトリエなのか、洋裁サロンなのか、ショップなのかははっきりしていませんでした。何でも作れちゃう母のスキルや母がコレクションしているミシンを活かして、母の定年後、一緒に働ける場を作れたらいいなって。今は核家族が多いじゃないですか。おばあちゃんから洋裁を教えてもらう機会のない方も多いだろうし、自分で作りたいけど一歩を踏み出せず本を読むだけの人もいるだろうし、お子さんの入園グッズを作るときだけ利用したい人もいるのでは?と思ったんです。意外とニーズはあるのかも......って」

カフェスタイルにした理由を聞くと、「自由きままにソーイングを楽しんでもらえるスペースにしたくて。あと、物作りへの間口が広がり、もっといろいろな人に興味を持ってもらえるのでは、と思ったんです。あと、自分の実体験で、作業中、『おなかすいたな、誰かご飯作ってくれないかな......』とか、作業後に散らかった部屋を見て『掃除しなくてすめばもっといいな』なんて思うこともあるので、みなさまに煩わしさから解放されて楽しみだけに打ち込んでいただけるスペースにできたら、というのも理由の1つですね」とneneさん。オープン後は、家族でカフェに来て、母親がミシンを使っている間に、父親と子どもは食事やお茶をして寛ぎながら待つ。そんな光景もよくみられるそうで、その度に、「カフェスタイルにしてよかった」と思うのだそう。

念願だったショップをopen! 家族総出で店作りに励む

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こんなかわいいアイテムも数時間で作れちゃうとのこと!

開店までの道のりは順風満帆だったわけではない。いつか母と何かできたら......と思ってはいたが、具体的なプランがあるわけではなかった。


「作家活動を続けるためにアルバイトをしつつ、井の頭公園のアートマーケットに出店して自作の帽子の販売したりもしていました。転機が訪れたのは、昨年のこと。知り合いに『物件が空いてるから教室でも開いたら?』って言われたんです。その時は店の立地が希望と合わず断念しましたが、『店を持つならこんな場所がいい!』という具体的なイメージが湧いてきて、開店のヒントがもらえたんです」

それからなんと1ヵ月も経たないうちにneneさんは今の店舗物件に巡り合う。

「たまたま覗いた不動産屋さんで気になる物件があり、写真を見たらよく知っている場所でした。すぐに物件を見せてもらい、勝手口の方から入り口を見渡した時にピン!ときて。ここで夢を実現したいって思いました。それに震災の後だったので、家族が近くにいる地元で働けるというのも魅力的でしたね」

ここと決めてからのneneさんの決断は早かった。すぐに賃貸契約を結び、開店準備にとりかった。壁は自分で2ヵ月かけて塗り、電気工事士の資格を持つ父親が電気工事を行った。さらに木製のカウンターも作ってくれたという。内装で外部に依頼したのは床のクロス張りだけ。必要な家具はネットで見つけ、母親と自分のミシンを持ち込む。いつか店を開いた時に飾ろうと10年前に買っていたポスター、自宅にあったが使っていなかったソファーが持ちこまれ、いい感じでneneさんワールドが出来上がった。みんなの力を結集させて開店までこぎ着けたのは、契約から4ヵ月後のことだった。

新たな夢に向かってさらなる一歩を踏み出す

オープンして間もなく1年。当初は、1時間500円(ミシン操作説明のみ、糸代別、スペース利用同額)のフリープランを主軸に展開していたが、今ではお客様からのリクエストで始めたフリーソーイングスクール(月額制8000円・入会金3000円)が大きな基盤になっている。そのほか、子ども向けのプランや単発イベントなど、ニーズに合わせてサービスプランを定期的に見直している。

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いつか店を持ったときに飾ろうと10年前に買ったポスターの前で。

「オープン当初は私ひとりで接客していたので本当に忙しくて。多くの方に来店いただけて有り難かったのですが、お店が回らないという事態を身をもって体験しました。それからはプラン決めの際に少し注意をするようになりましたね。とは言っても高額になりすぎないよう価格帯には気をつけています。安すぎない?と言われることもあるのですが、ついついオマケしちゃうんです(笑)」

今まで洋裁に対して一歩を踏み出せなかった人から、「ずっと作りたかったものが作れました」「コツコツ買い集めていた布がやっと活かせた」という喜びの声を聞くのが何よりも嬉しいとneneさん。

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師であり、よきビジネスパートナーであるお母様とのツーショット。

「今後は母が完全にリタイアし、カフェ運営に専念できるような経営状態にするのが目標です。教室や講座も増やしたいのですが、フリープランのお客様が来店しにくくなるのは避けたいので、お客様のさまざまなご要望にお応えできるようにどちらも両立させていきたいです。ゆくゆくは教室部門や教室用店舗を立ち上げる......というのもあり得るかもしれません。そうなった場合、スタッフの雇用も必要になってくるので、人材育成も視野に入れて活動していきたいですね。そして、帽子のオーダーをいただくことも多いので、もちろん作家活動も続けていきますよ」

ある一日のスケジュール

06:30 起床。シャワーを浴び、自転車で約5分のお店へ向かう
07:00 到着後、サンプル作成
08:00 母と簡単に食事をとりながら1日の流れの確認、打ち合わせ
08:15 店内の掃除。フリーソーイングスクールの準備。メールチェックなど
09:00 フリーソーイングスクールスタート
12:30 スクール終了。お茶を出し、店内の片づけ
13:30 通常営業スタート。帽子作りのアシストプラン(4時間)
17:30 昼食
18:00 材料の仕入れ
19:00 カフェメニュー(食事)の仕込み、メール確認、ブログやtwitterチェック
20:00 閉店後、1日の〆、掃除、翌日以降の予約状況等確認、オーダー品作成
22:30 母と近所のお気に入りのお店で夕食(というか、お酒を飲みながら今後の作品やイベント企画などアレコレ夢を膨らませる)
24:00 帰宅後入浴、録画しておいた映画を観る
02:00 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

基本、長く落ち込むことはあまりないのですが、映画『STAR WARS』が大好きで観ると元気がわいてきますね。一番好きなのは、『エピソード4 新たなる希望』。もう数えきれないくらい、繰り返し観ています。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

サービスの価格決めはどのようにされていますか?
業者が運営するソーイングスペースの価格を参考にしましたが、最低限、店が運営できる金額を見極め、そこから1日何名の来店があれば良いかを逆算して価格を決めました。あまりに低価格にすると忙しい割に売上げが少ない......となってしまうので見極めが難しいですね。
お店のPRはどのようにされていますか?
オープン当初はNHKの連続テレビ小説「カーネーション」が人気だったので、相乗効果でラジオやTVで取り上げてもらう機会に恵まれました。ですから広告・宣伝活動は特に行っておらず、まだまだ手が回っていないのが現状です。今はブログからの発信、近所の方との触れ合いからお店のことを知っていただけたらと思っています。
家族経営の注意点はありますか?
私情をお店に持ちこまない(笑)! 意見がぶつかることはもちろんあるのですが、それはお客様には関係のないこと。楽しみに来てくださっているのに店の雰囲気が悪いなんて申し訳ないですからね。「母親」ではなく「スタッフ」として接する、甘えすぎないように心がけています。
目標にしている人は?
ズバリ母です。洋裁に興味を持ったのも子ども時代に母が洋服を作って着せてくれていたから。教わりたいことがまだまだたくさんあるので、ずっと元気でいてほしいです。本当に尊敬してます。
neneさんのような働き方を目指す方へのメッセージをお願いします!
やらないで後悔するのはイヤなのでとりあえずトライしてみる。好きを仕事にしたら、多少イヤなことが起きても耐えられると思うんです。好きで好きで仕方ない、それくらい情熱を注げるものを仕事にする。落ち込んだりするヒマがあるなら笑って前を向く。後悔することも少しはあるかもしれませんが、気にしていては何も始まらないです。一度しかない人生、やりたいことをやりきりましょう。

きっかけは、震災と母の定年退職!
経験と夢を兼ねたミシンカフェをオープン

須磨ますみ

Writer 須磨ますみ

前は編集・ライター、今は会社員+週末ライター。
各種インタビュー、仕事系、グルメ、ウエディングなどの編集・ライティング経験あり。

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