Vol.87 合同会社タバブックス代表 宮川真紀さん

Profile

東京都生まれ。株式会社パルコ(PARCO出版)にて雑誌・書籍編集者として勤務した後、2006年よりフリーの編集者へ転身。2012年8月に編集と出版レーベルを備えたタバブックスを設立。2013年6月に法人化し、社名を合同会社タバブックスへ。金融系からサブカル、アート、実用系まで、幅広い企画を手がけ、現在は書籍やリトルプレスの出版、編集、取材、執筆、電子書籍などにも取り組んでいる。大学生と中学生の子どもをもつシングルマザー。

宮川真紀さんのサイト
「タバブックス」

思い立ったらすぐ行動!自然な流れで次の道を切り拓く

vol87_2小雨が降る渋谷の午前10時。気だるさが残る空間の中で、天候の悪さを吹き飛ばすような笑顔で出迎えてくれた宮川さん。何気ない雑談にも笑いが混じり、自然と人を笑顔にしてしまう不思議な魅力を感じた。

インタビューの開口一番、「昨日、登記しちゃった」と宮川さん。「先日、口座開設の相談をしたときに法人口座の説明を受け、その方が取引先からの信用やメリットもあるかと思って。その日のうちに会社設立の本を購入して、合同会社というものならできそうだと思い法人化することにしました」。大きな決断をそうとは思わず、自然な流れで新しい道を開拓してきた宮川さんは、「思い立ったが吉日」とばかりに、すぐさま想いを行動に移す。独立して今年で7年目になるが、振り返ると、同じようなターニングポイントがこれまでにも何度かあったようだ。

例えば、フリーランスに転向したとき。「2006年に、それまで勤めていた会社を退職しました。早期退職の募集が出て、いいタイミングだと思って(笑)」。周囲からの反対もあったが、「何とかなる。というかその道しかない」と思って決めたと笑う。あるいは、タバブックスを立ち上げたとき。ちょうどその頃、出版業界に陰りが見え始め、書籍企画が通りにくくなっていた。その一方で、電子書籍や個人が編集・出版をおこなう小さな出版社の存在が目立ち始めていた。「担当した書籍が絶版になり、次の版元を探していたのですが、出版社との話がなかなか折り合わなくて......。だったら自分で出版機能を持って、編集も出版もしようと決めました」と宮川さん。ここから出版社タバブックスが本格的に動き始めたのだった。

よりおもしろい本を作るために出版レーベル設立

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「仕事」について読みたい記事や雑誌があまりなかったので、自分で作ろうと思い創刊したリトルプレス『仕事文脈 vol.1 』『仕事文脈 vol.2』や、大学生が運営するサイトに声をかけ、冊子にした『モッケイエンタテイメント』は、宮川さんがおもしろいと思ったものをそのまま本にしたものだ。

出版レーベルを立ち上げ版元となったことで、書店員や読者との距離が縮まったと話す宮川さん。「お店に行き、直接書店員さんたちと交渉するやり取りが増えました。本を気に入ってくださって感想をいただけたり、販売状況を教えてもらえたりと、読者の声が直に知れるので、さらにおもしろい本を作ろうというモチベーションにもなりました」。そしてなによりも、出したい!と思う本を出せる喜びは大きいと話す。


そして、本をつくることでさまざまな出会いやきっかけがあり、それが次への展開につながっているという。不動産投資関係の書籍編集をした際には、持っていたほうが良いだろうということでFP(ファイナンシャルプランニング技能士3級)の資格を取得。本の編集のため、InDesign、Illustratorの使い方も独学で学んだ。さらには、仕事の合間をぬって、社会人大学生として大学院に通っていた時期も。宮川さんの行動は"興味"や"好奇心"がきっかけで、そこでの出会いや新しい学びが本づくりにすべて生かされているのだ。

編集という世界にセオリーはない。未知への挑戦は続いていく。

vol87_3自身を「新しい物好き」と称する宮川さんは、紙だけでなく電子書籍やアプリなどの新しい媒体にも注目している。「年に書籍や冊子を2〜3冊発行したいと思っています。タバブックスのwebサイトで連載中の記事も、電子書籍も含めて書籍化を検討する予定です」。紙以外にも情報を発信できる媒体は次々と登場しているが、まだ混沌とした状態なので新しいことを始めやすいと感じているという。そして、長く続けているからこそ、今までのやり方や常識にこだわるのではなく、さまざまな可能性を見つけて挑戦することも大切だと静かに語る。

「これからフリーで編集をする方にも言えることなのですが、自分の考えた企画をお金に変えるまでのイメージを持ちつつ、媒体が何かというのにこだわらずに、自分からどんどん新しいアイデアを出していくことが大事になってくると思います。今までのように、出版社から仕事を受けて編集をするという時代ではありません。ブログやSNSなどの自分を出せる場所が増えているということは、自分が軸となってやりたいことを仕事につなげられる機会が多くなってきたということ。おもしろいことを探すだけでなく、自分からも発信していけば、意外なところから仕事の声がかかったり、何かしら形になっていくのだと思います」。

ある一日のスケジュール

06:30 起床。犬の散歩
07:00 朝食の準備。家庭菜園の世話など
08:30 午前中は自宅で事務仕事。日によっては本の発送作業を行うことも
11:00 事務所に移動。ライターさんと打ち合わせ
12:00 法務局で登記の申請手続き
14:00 事務所に戻り、連載企画打ち合わせ
19:00 帰宅。夕食の準備や犬の散歩など。夕食後、家族だんらん。メールの返信、原稿チェック
24:30 本を読みながら就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

車に乗ることも多いので、気分転換がてら音楽をよく聴きます。洋楽、邦楽、ジャンルを問わずですが、とくにロックが好きですね。また、子どもも音楽が好きなので、たまに貸しあったりしています(笑)。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

出版レーベルを立ち上げて変化したことは?
自分がおもしろいと思った本を自由に作れるようになったこと。その代わり、経理、営業、管理などすべてやります。著者、読者、書店などに対しての責任も、自分1人が持つことになります。
仕事のボリュームコントロールはどうしていますか?
とくに気をつけていることはないです。仕事とプライベートをきちんと区切ってもいないですし。ただ、外部から受ける仕事は積極的に増やそうとはせずに、自社出版の仕事の方に重きを置いていきたいと思っています。
毎月のお金のやりくりはどうしていますか?
月給制の会社員とのは違い、毎月の収入が予測しづらく、過去に何度か頭を抱えたことがあります。やはりお金は大事なので毎月のやりくりはもちろんのこと、FPで得た知識を活用して編集の仕事以外にも収入源を確保して生活の基盤としています。
影響を受けた人は?
会社員時代、産休をしっかりとって復帰する人や、バリバリ仕事をしている年上の女性をたくさん見てきたので、自分もいくつになっても新しい仕事をしたいと考えているのかも。出産や結婚を機に仕事を辞めるという意識を持ったこともありません。
フリーランスマザーへ向けてのメッセージ
今は、息子が大学生、娘が中学生と大きくなり、それぞれ自立し始めているので、仕事しやすい環境になりました。もちろん、子どもの成長過程で、その時々に迷ったり悩んだりすることもたくさんありましたが、今になって思うのは、いくら小さくても子どもには子どもなりの意思があり、きちんと気持ちを持っていたのだということ。大切なのは、世間の情報に惑わされないで、子どもの声に耳を傾けて、ひとりひとりの成長を見守ってあげることなのではないでしょうか。

フリー編集者から出版レーベル立ちあげ
おもしろいことをそのまま本にしたい

Rhythmoon編集部

Writer Rhythmoon編集部

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