Vol.89 NPO法人alfalfa代表 山口佳子さん

Profile

大学院在学中よりコンテンポラリー・ダンスを中心として様々な劇場やアーティストの公演制作に携わる。2006年よりフリーランスのアートマネージャーのゆるやかなネットワークであるアルファルファをスタート。「生活にアートでプラスαを」をキーワードに、アーティストのマネジメントや舞台作品、アートプロジェクトの企画制作、イベントでのケータリング等を行っている。08年より法政大学キャリアデザイン学部非常勤講師、10年よりアサヒ・アートスクエア運営委員をつとめる。2013年2月に長女出産。

山口佳子さんのサイト
alfalfa

「自由のきく仕事」をしながら、二足のわらじ生活

「パフォーミングアーツ」という言葉を聞いてピンと来る人は多くはないかもしれない。演劇や舞踊など、実演をともなう舞台芸術全般を指す言葉で、日本の伝統芸能からコンテンポラリーダンスまで様々な芸術が含まれる。実演するアーティストと、公演を行う劇場との間に立ち、制作全般を仕切るのがアートマネージャーとしての山口さんの仕事だ。
最近では伝統芸能である能と現代音楽を組み合わせた青木涼子「Noh × Contemporary Music」や、新国立劇場で行われた平山素子「フランス印象派ダンス Trip Trip Triptych」などの公演をサポートしている。

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アルファルファのサポートアーティスト、振付家・ダンサーの平山素子、斉藤美音子が出演する公演のフライヤー。 (画像上)「音の息吹」 平成25年10月5日(土)東京文化会館ホール (画像下)「イデビアン・クルー 麻痺 引き出し 嫉妬」10月5日(土)~7日(月)KAAT神奈川芸術劇場

もともとこういう仕事を目指していたわけではなく、学生時代は漠然と「美術館で働きたい」と考えていた山口さん。大学卒業後、キュレーターを目指して進んだアートスクール~大学院で、ボランティアで始めたアーティストの手伝いがきっかけでこの世界に縁ができた。舞台制作の現場は面白かったが、なかなかお金になりにくいという現実もあり、大学院卒業時、山口さんは「自由のきく仕事」を第一条件にアートとは関係のない大学予備校のチューターとして就職。仕事以外の自分の時間のほとんどすべてを注いでアーティストの制作の手伝いを続けた。企画から場所探し、予算管理、広報と、制作の仕事は多岐にわたる。
「振り返るとこの頃が一番大変な時代。でもお金とは関係なく、純粋に面白いと思えたからやっていました」

独立、そして法人化。専門性を打ち出すためのNPO

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「生活にアートでプラスアルファを」をコンセプトに、社会に良質なアートを届けることで、私たちが生きる世界を、楽しく、豊かなものにしていくことを目指して活動している。alfalfaのサイトはこちらから>>

チューターと舞台制作の二足のわらじ生活は3年ほど続いた。ポスターやチラシなどに制作として自分の名前が載るようになると、名前がひとり歩きし、だんだんと依頼も増え、多忙を極める。愛知万博のタイミングで劇場の仕事が決まった時、この仕事一本にしようと予備校の仕事を辞め、フリーランスとして独立。ほどなくして結婚。 「自分だけの生活から相手のいる生活に変わり、自分がやりたい仕事と相手が納得する働き方とのバランスを考える必要が出てきた。そこでアルファルファという屋号を立ち上げ、アートマネージャー同士のゆるやかなネットワークを築きながらの活動を模索しはじめました」

関わっていたアーティストの飛躍や、企業のメセナ部門や様々な劇場とのつながりなどから仕事は順調に増え、クライアントも扱う予算も大きくなり、個人のアカウントでは限界が出てきたためアルファルファを法人化。NPOという形を選択をした理由は、「専門性のある集団であることを打ち出したかったから」という。
「その頃、NPOという看板のもと、専門的な活動をする人が増えていました。私たちも社会貢献とかそういうイメージではなく、アートという専門性を打ち出して、自分たちの生活にあったらいいなと思うものを形にしていきたいと思ったんです」。
法人化して今年で5年目を迎える。現在のメンバーは15名。フリーランスのアートマネージャーやアーティストがアルファルファをハブにつながっている。

これからは仕組みを作ることを考えていきたい

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「フラムドールのある家」のトークイベントでは、ドイツの子どもたちが放課後を過ごす文化施設の事例を見ながら、これからの日本の保育施設のあり方の可能性についてユニークな意見が交わされた。

今年の2月に第一子となる長女を出産した山口さん。子育て中心の生活だが、仕事はゆるやかに続けている。現在の働き方や今後の展望について尋ねてみた。

「公演制作は朝から晩まで劇場に張りついていることも多い仕事。でも少なくとも今後数年は無制限に時間を使うような働き方はできない。一つの仕事を細分化して、アルファルファの他のメンバーにサポートしてもらいながら仕事を進めています。メンバーが同じアートマネージャーという職種なので仕事のシェアはしやすいですね」

また、最近ではアートそのものより、仕組みを作ることに興味があるという山口さん。「普通の人たちの生活の中にアートを組み込んでいく、そういう仕組み作りのほかに、子どもとその親を取り巻く環境にも何か新しい仕組みを作れたら、と」

今回インタビュー会場となったアサヒアートスクエアではこの日、「フラムドールのある家」というイベントが行われていた。山口さんも運営委員として関わっており、「東京で子どもと暮らそう」というテーマでトークイベントを行った。

「アート業界は今出産ラッシュなんです。子どもを取り巻く環境について、いろいろ考え始めている人も多い。面白い動きが出てきそうです」

ある一日のスケジュール

07:00 起床。朝食後、家事&メールベースで仕事
12:00 子どもと遊ぶ&メンバーからの仕事の報告(電話or自宅に来てもらう)
16:00 家事&買い物、子どもの世話
20:00 子ども寝かしつけ。夫婦で夕食後、仕事
25:00 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

「腹をくくる」こと、でしょうか(笑)。周囲からもよく言われますが、ギリギリまではあれこれ悩むけれど、最後は崖から飛び降りるタイプです。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

アートはお金になりにくいというイメージがあるが?
クライアントがしっかりしているところが多いので、その点はありがたいです。そういうクライアントさんから信頼を得ていい関係でいるために、とにかくていねいに仕事をすること。また、言われた範囲だけをやるのではなく、相手が何をしたいのかを感じ取って提案していくことが大事です。
営業活動はどうしてる?
営業活動はしていません。仕事はほとんど人とのつながりで来る。仕事を受けるときは、お金よりも自分が面白いと思えるか、この仕事にはチャレンジする何かがあるか、を基準にし、興味を持てないものは断ります。フリーランスとしては勇気のいることかもしれませんが、仕事を選ぶということはブランディングにもつながっていると思います。
法人化で大変だったことは?
手続きがとにかく大変だった。フリーランスには直属の上司はいないけれど、その分いろんな分野の人と知り合えるので、わからないことは周囲にどんどん相談して聞きました。
山口さんにとって理想の働き方とは?
ずっと理想としてあるのは、週3日働いて週4日休むくらいのスタイル。ぜんぜんできていませんが、今でも模索は続けています。あとは自分が仕事をしている環境を見せながら子育てがしたい。そういう現場は今は少ないですが、自分が作っていくのもいいなと思っています。
座右の銘は?
「有言実行」。何でも言葉にすることで、自分を追い込んで実行するようにしています。自分だけしか知らないことだと、「まあいいか」となってしまいがちなので、興味があること、やると決めたことは、とにかく色んな人に話をして、実行するようにしています。

普通の人の生活の中に、「あったらいいな」というものを届けたい

Rhythmoon編集部

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