Vol.110 料理家 菅野のなさん「月1の料理教室から出版、コラム執筆、企業タイアップ...と仕事の幅を広げる」

Profile

料理家 菅野のなさん

オーガニック料理教室『ワクワクワーク』代表。「こだわりの食材と初心者でも簡単につくれるメニュー」「心の書き出しワーク」という料理教室としては珍しい内容が話題に。ほか有機宅配「Oisix」へのレシピ提供、学習塾「湘南ゼミナール」Webサイト内でのコラム執筆など幅広く活躍している。2015年発売の初の著書『子どもと食べたい時短おやつ』(辰巳出版)がロングヒット中、2017年4月『子どもと食べたい 常備菜入門』(同)、6月に『今日も手作りおやつをひとつ。』(朝日新聞出版)を発売予定。

働きながら副業として料理教室をスタート

初の著書『子どもと食べたい時短おやつ』(辰巳出版)がロングヒット中の菅野のなさん。父はミュージシャン、母は管理栄養士と、自分の得意分野を活かした仕事をする両親に育てられ、子どもの頃から「私は何をする人になるんだろう?」と考えていたという。
大学卒業後はIT企業に就職するも、体調を崩したことで「本当にやりたいことは?」と自問するようになり、母とともにオーガニック料理教室『ワクワークワーク』を立ち上げた。

はじめは知り合いに声をかけ、副業として月1回の開催。リクエストを受けたメニューを教えるという内容だった。「それはそれで楽しかったんですが、1年ほどして『自分たちが料理を通して伝えたいことは?』『料理を通して人の役に立つには?』ということを考えるようになりました」。

時を同じくして、長女を出産し、今後について真剣に考えるように。

「素材と簡単さにこだわったメニューを通し、自身の食生活を見つめ直してより良い食生活へつなげる」というコンセプトはスムーズに決まった。ただ、どうやって集客につなげるかがわからない。「スタート時からクラスを満席にする」と決めた菅野さんは、集客コンサルタントの助けを借り、見事目標を達成した。

201704_sugano_3.jpg

料理教室の様子

「もっと先に進みたい」ときはその道のプロを頼る

菅野さんの仕事術において、大きな特徴のひとつが「必要なときはプロに頼る」ということだ。「本を出したい」と思ったときもそう。出版のきっかけをつかむために出版プロデューサーのもとで半年ほど学び、『子どもと食べたい時短おやつ』出版への道筋をつけた。

内容の良さが第一であることは言うまでもないが、結果的に同書は大ヒット。これを機に新たに2作の出版が決まったほか、さまざまな仕事のオファーも増えたという。

「仕事をしていると、『ここから先は自分だけでは無理だ』という瞬間がある。『もっと先に進みたい』と思ったときに、そのための知識やノウハウをもっている人に頼るんです」

それは、「自己投資」という感覚に近いという。「餅は餅屋」という言葉があるが、専門分野以外のことはその道のプロに任せることで目標達成の近道ができ、自身にとっても新たな気づきやノウハウを得ることもできる。このことは、とかく一人で乗り切ろうとしがちなフリーランスの人とっては、大きなヒントとなるだろう。

自分だけのスキルにこだわり、最善を尽くす

月に1回の料理教室からスタートし、今や著作の出版や料理教室の講師養成、企業とのタイアップなど......仕事の幅をどんどん広げている菅野さん。仕事のやりがいや楽しさについて聞いてみると、意外にも(?)、「料理教室のスタッフとのチームワークがうまくいったとき」という答えが返ってきた。

「料理教室の運営って、材料の調達や進行方法ひとつとっても、大変なことが多いんです。たしかにほかの仕事がうまくいっているときは『これをメインにしたほうがいいのかも』と思ったこともありますが(笑)、料理教室ほどの充実感や楽しさを超えるものはなくて。改めて、料理教室は自分の仕事の核だと実感しました」

201704_sugano_4.jpg

ランチ後に必ず行うワークタイム

最後に、起業やフリーランスとして仕事をするうえで大切なことを語ってもらった。
「得意なひとつに特化し、できる限りのことをする。中途半端に手を広げず、まずは自分だけが持っているスキルや知識を伸ばしていくことが大事だと思います」

まず自分という「素材」にこだわり、最善を尽くす。
一見シンプルだが、「いい素材と実践しやすさがあってこそ、日々の食生活がより良くなる」という菅野さんの料理に対する考え方と重なり、言葉の真意が大いに腑に落ちた。

【新刊情報】

201704_sugano_5.jpg

子どもと食べたい 常備菜入門
1,300円(税別)辰巳出版

ごはんづくりが本当に楽になる、継続しやすい常備菜活用術を紹介。1週間分をまとめて作り置くようなことはしなくても、そのまま食べておいしいシンプルな常備菜は、気分や好みに合わせてアレンジも可能。忙しいママたちの負担にならないように、夕食の準備時間短縮にもこだわった一冊です。

ある一日のスケジュール

07:00 起床→朝食
08:00 片付けをしながら子どもたちを送り出し、料理教室へ
09:00~16:30 料理教室、打ち合わせ、庶務など
16:30~20:30 子どもの迎え→家事→夕食・入浴
20:30~ 子どもの寝かしつけ
21:30~ 執筆や資料作成など
23:30 睡眠

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

家族です! ちょっとうまくいったこと、ちょっと心配なことなど夫には何でも話します。子どもが風邪をひいてしまったら、じいじが保育したり...と家族なしにはここまでやってこれませんでした。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

人脈はどのようにつくりますか?
意識して作ってきた人脈は、ないです(キッパリ)! 異業種交流会に参加したり、たくさんの人に名刺を配ったりするようなことは苦手だし、行かないですね。目の前の仕事に最善を尽くすことの繰り返しです。ただ、その結果として生まれた「ご縁」は本当にありがたく、大事にしたいと思っています。
どんな気持ちを大事にして、仕事をしていますか?
根性と幸せです(笑)。「これをやる」と決めたら、そのための道筋を考えながら、一生懸命やるほうだとは思います。「ダメだったらしょうがない」という考え方はしませんね。不可能に思えるような目標に対しても、達成するために自分なりに何ができるかを考え、できる限りのことをしているつもりです。その上でそこに幸せがあるか、それが新しい私の考えでもあります。
受ける仕事と受けない仕事はどう見極めますか?
ひと言でいえば、直感でしょうか。自分の頭・心・体がすべて「OK」と感じた仕事は、お受けします。「この部分が不安だけど、一応やるか」ということはありませんね。今ほど仕事がなかったときも、それは変わりません。
仕事全体をうまく回すコツは?
仕事の優先順位を決めて、必ずそれに従って取り組んでいます。常々順番が入れ替わる中で、基準となるものを決めては見直し、の繰り返しです。
オンとオフの切り替えはしていますか?
小学生と幼稚園の子どもがいるので、日中の仕事は16時半でいったん終わりにし、そこから子どもが寝るまでは仕事のことは考えないようにしているんですが......メッセンジャーなどの対応はしてしまいますね。休みの日も......やっぱりメッセンジャーの対応と、子どもが寝た後は仕事をしていますね。最近夜9時以降の対応は自由にすると決めたところです。少しだけ余裕ができていると感じます。
細井 秀美

Writer 細井 秀美

大学卒業後にエンタテインメント系雑誌、ビジネス書の出版社でそれぞれ編集者として勤務した後、フリーランスに。ライター界のユーティリティプレイヤーを目指してWeb・書籍・雑誌問わず幅広い分野の仕事をこなすも、数字とITには苦手意識が……。インタビューを通し、多彩・多才な人々の生き方や考え方に触れることにやりがいを感じている。高齢出産したふたりの子どもを抱え、仕事と育児に追われる日々。

細井 秀美さんの記事一覧はこちら