Vol.111 初の単著『マンガ 自営業の老後』が大ブレイク!イラストレーター上田惣子さんインタビュー

発売から1ヵ月で5刷突破! フリーランス歴28年の53歳ベテランイラストレーター初の単著『マンガ 自営業の老後』著者上田惣子さんを編集長・オノリナがインタビュー。

Profile

上田惣子さん
秋田出身の53歳イラストレーター。雑誌・書籍でイラストやマンガを数多く手がける。共著に『マンガ 女のお金の超常識』『8歳からのお給料袋』など多数。同業の夫と猫4匹と暮らす。

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マンガ 自営業の老後 』文響社
仕事はきっちり、〆切は絶対守るまじめな働きマンだが、お金まわりの知識とセンスがなく、事務手続きが大の苦手。将来設計をしないまま50代に突入したイラストレーターの老後不安脱出ルポ!フリーランスが死ぬまで幸せに生きるために役立つ実用知識が満載です。

フリーランスを蝕む正体不明の不安

――『マンガ 自営業の老後』が大ヒット中ですね。おめでとうございます! 私のまわりでも、タイトルを見て思わず買ってしまった!という人や、逆に怖くて開けなかった......といった両方の声を多く聞き、すごく注目されているのを実感しました。

上田:ありがとうございます。当初は、「自営業」に限定される内容はどれくらい反響があるのかな......と思っていたので、正直驚いています。マネー本は、基本的に会社員がモデルになっているものが多いので、自営業に特化して、その実情をさらけ出して書いたのがよかったのかもしれません。

――とくに前書き部分にもありましたが、コツコツ真面目に仕事をしていたのに、50歳前後になって気づいたら年収3分の1になってた......とか。上田さんのようなキャリアと実績のあるイラストレーターさんでも、「やっぱりそうなっちゃうんだ......」とフリーランスの未来と現実を垣間見たような感じがして。

上田:私の年代になると、腕一本で仕事をしている人はかなり少なくなってきている気がします。超有名人とかは別ですけど。今回、本の中で登場いただいた3名は、収入や働き方もそれぞれで、楽しそうに暮らしている方たちでしたが、実際のところ、そういうハッピーな事例を探すのは大変でした。

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――やっぱり、そうなんですね......。

上田:フリーランスの中には、「これまで食べてこられたから、これからもなんとかなるんじゃない?」という人が多いですが、実際は、貯金もなく、廃業していく人も少なくないようです。専門スキルはあるけれど、ほかの仕事ができるわけではないから、つぶしがきかないんですよね。そういう人たちを間近で見ていて、とにかく不安だけが先立って。本書の編集者の飛田さんに再会するまでは、「もう、誰か私を助けて〜」という心境でした。

――本当に、超タイムリーな再会だったんですね。

がむしゃらに働いた30代、そして突然の病気休業で仕事が激減

――少し遡りますが、上田さんがフリーランスになった時はどんな時代だったのですか?

上田:バブルも終わりの頃でしたが、いい時代でした。仕事はたくさんありましたし、広告の予算も今と桁がひとつ違ってましたから。アルバイトだけで食べている人も多かったし。だから「なんとかなるだろう」と、とくに準備もせずフリーランスになりました。

――仕事はどうやって探したんですか?

上田:最初の2年間は、みっちり営業しましたね。1日2社と決めて、ポートフォリオをもって出版社をまわっていました。一つ仕事が決まると、そこからまた新しい仕事につながって......というように仕事が増えていった感じです。来た仕事は断らず、〆切も絶対に守り、二日酔いにも負けず、20〜30代はとにかく働きました。

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――大きな波とかはなかったんですか?

上田:それがとくになかったんです。未払いトラブルとか、小さなものはいろいろありましたけど、年収もそこそこをキープしていました。でも40代になって初めてズコーンと落ち込んでしまって。そのときはかなり焦りました。

――病気になられたときですよね。

上田:そう、乳がんになってしまって。もしかしたら自分は長生きできないかもしれない、だから、少し仕事も休んでのんびりしようかなと思って。そのときレギュラーの仕事が16〜17本あったんですが、全部やめちゃったんです。加入していたガン保険もおりたし、貯金もそこそこあったので、なんとかなるだろうと思って。

――ええ〜、もったいない! 仕事をゼロにするのは怖くなかったですか?

上田:それがね、実は憧れてたんですよ。朝起きてふふん♪としながらコーヒーを飲んだり、飼っている猫と戯れながらブラッシングしてみたり、パンを焼いてみたりという生活に(笑)。実際、パンは焼きませんでしたけど。でも、やってみたらすぐに飽きちゃって。

――そして、一年弱で仕事に復帰されたですね。

上田:そうしたら、仕事が全然こなくなっていたんです。ちょっとくらい仕事を休んでもなんとかなるかなと思ってたんですが、甘かったですね。毎日メールをチェックしても、仕事の依頼はなく......。営業すればよかったんですけど、そのうちくるだろうと思ってすぐに動かなかったんです。

その後、知り合いの編集者さんに連絡して仕事をもらい、なんとかまわりだしましたが、50歳前後で年収はピーク時の3分の1に。お金がないのもつらいけど、必要とされていないのはもっとつらかったですね。

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53歳で初の単著が大ブレイク!今の目標は「現状維持」

――そんな暗黒時代を経て、53歳で初の単著が大ヒット中ですが、執筆で一番大変だったことはなんですか?

上田:そうですね〜。やっぱり、自分をさらけだすことですかね。自分のことを描くタイプの仕事は、一生やらないと思ってましたから。企画が決まった当初は、実は年金未払いのことも飛田さんには内緒にしてたんですよ(笑)。だって最低すぎて恥ずかしいじゃないですか!

でも、飛田さんに、「すべて出してもらいます」「やってもらいます」といわれて。飛田さんに言われるがまま、暗闇で手を引っ張ってもらった感じです。

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この本のおかげで、自分のことを直視できるようになりましたね。お金のことも税金のことも、知らないふりして目をつぶらないようにしようと思いました。

――『マンガ 自営業の老後』をどんな方に読んでもらいたいですか?

上田:フリーランスが老後も幸せに生きるために「今できること」をまとめているので、今の状況が厳しい、先が不安というフリーランスの人にこそ、ぜひ読んで欲しいです。年金未加入でも50代ならまだ間に合います!

いつかフリーランスになりたい会社員の方にも参考にしていただいているようです。会社員って、すべて会社がやってくれちゃうので、税金や年金のことをわかっていないとのこと。Twitterでの反響を見ていたら、「会社員だけど役に立った」というコメントは結構ありました。

――本の中では、「大家さんになりたい」という章もありましたが、上田さんの今後の目標はありますか?

上田:そうですね、まずはイラストレーターとして現状維持ができれば、と。でも現状維持って、とても大変なことだと思うんです。なので、もう少し複数の収入パイプを持つことができればと思います。あとは心身ともに健康であること。何があっても動じない強さがあれば、この先大丈夫かと。そしてより楽しい60歳を目指したいです。

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――最後に、フリーランスの方やこれからフリーランスになりたい方へのメッセージをお願いします。

上田:まずは本職1本でしっかり稼いで食べていける土台を作ることが大切だと思います。でないと、"自称フリーランス"になっちゃう。その土台ができたら、自分の好きなことやチャレンジしたいことを目指したり、夢を追いかけたり、やりたいようにやればよいと思います。そして頭で考えているだけでなく、行動することで不安は消えます。動かないと、物ごとはじまりませんから。

上田さんが考える「フリーランスで長く働き続けるポイント」

・どんなときも辞めずに、コツコツと続けていくこと
休んだら、簡単に忘れられるのがフリーランス。
自転車のように、一度止まってしまうと走り出したくてもすぐには進まないしスピードも出ない。ゆっくりでも漕ぎ続けていることが大事!

オノリナ

Writer オノリナ

Webプロデューサー・リズムーン編集長
リズムーンを運営する合同会社カレイドスタイル代表。女性向けWebメディア編集、フリーランスを経て、2014年に法人を設立。国内外のネットワークを活かして最適なチームを組みながら、研究機関のサイエンスアウトリーチ支援や、企業オウンドメディアの女性向けコンテンツ企画・制作を数多く手がけている。また、独立時に苦労した自らの経験から、女性フリーランスコミュニティ「リズムーン」を2009年に立ち上げ、「個」が主役の多様な働き方を加速させる社会の実現に向けた事業・サービスを展開している。プライベートでは、3人の子を持つワーキングマザー。趣味は卓球。

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