Vol.118 しじみ作家 なかじままさえさん「故郷のしじみを使って、オリジナルアクセサリーを開発」

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Profile

なかじままさえさん

1975年、島根県松江市生まれ。イラストレーター・しじみ作家。2001年より、フリーランスのイラストレーターとして活動開始。2013年より、地元・島根県松江市にある「宍道湖」のしじみを使ったアクセサリーの開発に取り組む。「しじみちょうMade by MasaeNakajima」のブランド名で、百貨店や地域マルシェへの出店をはじめ、地元松江市での委託販売、ワークショップなどを行っている。

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出雲大社からほど近く、夕景としじみで有名な「宍道湖」。なかじままさえさんは、そんな宍道湖のある島根県松江市の出身だ。故郷から宍道湖産のしじみの貝殻を取り寄せては、ひとつひとつ手作りで、アクセサリーに仕立てている。

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しじみの貝殻を布でくるみ、アクリル絵の具で、一点一点絵柄を描いていく。出雲大社のしめ縄や、宍道湖の夕景など、ご当地柄をモチーフにすることが多い。

なかじまさんが手がける、しじみアクセサリーブランド「しじみちょう」は、今年、ラジオ出演をきっかけに、篠原ともえさんがインスタグラムで紹介したことで、大きく話題に。今まさに、勢いに乗っているなかじまさんだが、発達障害を持つ2人のお子さんを育てながらここに至るのは、決して平坦な道のりではなかった。

自分の采配でできる、オリジナルの仕事を作りたい

子どもの頃から絵を描くことが大好きで、保育園の頃にはすでに、お友達から「お姫様の絵を描いて」など"依頼を受けて描く"ことをしていたというなかじまさん。短大ではインテリアデザインを学び、内装会社に入社するも、1年で結婚退社。その後、販売や営業のアルバイトをする中で模索しだしたのが、フリーランスという働き方だった。

「木工職人の夫は、次いつ休めるのかもわからなかったので、もし、このまま子どもができたら、今の仕事は続けられないと思ったんです。それで、家のことも回しながら、自分の采配ででき、かつ長く続けられる仕事を考えるように。そんな時に友人に誘われて、地元のデザインフェスタに出展したのをきっかけに、少しずつイラストの依頼を受けるようになりました」

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作風が決まらない、悶々とした日々

その後、すぐに1人目を出産。子育ての大変さに自身の体調不良も重なって、思うように活動できない日々が続いていたが、再びデザインフェスタに出展。この時、イラストのほかに初めて作ったのがしじみを使ったオブジェだった。

故郷との縁をつなぎたいという気持ちで一度は取り組んではみたものの、この時はまだ、しじみよりも、イラストを物にしたいという気持ちのほうが強かった。そこで、イラストをきちんと学ぶために学校に入学するが、自身のテイストが定まらない苦しさと、人一倍手のかかる子育てに、低空飛行の日々が続く。

そんな状況から抜けるきっかけになったのは、自分の作風が見つかったことだった。

「グループ展に向けて準備をする中で、アクリル絵の具を使ってみたんです。アクリル絵の具は、間違っても上から塗り直しができるので、失敗を恐れず大胆な表現ができます。そこに、よく尖らせた鉛筆で細かい描写を書き加えることで、私が求める繊細さも表現できました。これだ!と思いました。やっとここにたどり着けた。もし今後仕事を離れなくてはならないことが起こっても、ああ、ここに帰ってこればいいんだなって、とてもすっきりとした気持ちでした」

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「できない」ことから、しじみちょうは生まれた

「しじみ作家」としての人生が動き出したのは、2人目の産後。

「地域のマルシェに出店することになり、何か売れるものをと考えた時に、私にはイラストは描けても、それをデザインしてポストカードやメモ帳などの商品に高めることができなかったんです。そこで思い出したのがしじみでした。友人から、オブジェじゃなくてアクセサリーにしてみたら?というアドバイスをもらったことをきっかけに、やるなら今だ!としじみを使ったアクセサリー開発に踏み出しました」

ここから怒涛のごとく「しじみ作家」としての研究がはじまる。ひらすら街を歩き回り、アクセサリー屋、雑貨屋、洋服屋、ハンドメイドのお店などを片っ端から見て回った。パーツひとつ、編み方ひとつとっても、世の中にはいろいろなものがあることを知った。制作をはじめ、今の品質に高めるまでには2年もの月日を費やしたという。

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縁結びの神様である出雲大社、そして良縁を授かると言われる二枚貝のパワーにあやかっている「しじみちょう」。なかじまさん自身、これまでどんなにつらいことが起こっても、どこからともなくご縁を頂き、引き上げられてきたという。

しじみちょうを地域の産業にしたい

しじみ制作をスタートさせてからも、すぐには結果に結びつかないことも多かったが、それでも「今できること」をコツコツと続けた結果、委託販売先で「しじみちょう」を見た方が、マルシェに見に来てくださったり、マルシェで知り合った仲間から、さらに別のマルシェを紹介されたりと、ご縁がどんどんつながっていった。そして、今年に入ってからは、ラジオ出演や新聞掲載、百貨店での出店など、活動の場が広まると同時に、イベントで出逢ったテキスタイルデザイナーさんとコラボレーションするなど、バリエーションも豊かになってきている。

「これまで、どん底と思えるようなこともありましたが、ようやく花開いた気持ちです」

今後は、「しじみちょう」を、地域の産業にしていきたいと、なかじまさんは笑う。

「私の祖母も、暇さえあればしじみの根付*を作ったり、何か縫い物をしているような人でした。そんな手に覚えのある地域のおばあちゃんたちが、みんなでしじみちょうを作りながら、収入を得る。おばあちゃんたちの生きがいにもなるし、しじみちょうをきっかけに、都会から地元に人が流れれば、地域も潤う。そんな仕組みづくりに、私の活動が役に立てたらうれしいですね」

自分オリジナルの仕事を生み出し、ついに回り始めたなかじまさん。しじみちょうにご縁を乗せて、これからもさらに飛躍するに違いない。

*しじみの根付:しじみ貝を布でくるみ、キーホルダーやストラップにしたもの。

ある1日のスケジュール

6:30
起床→朝食・お弁当を作る
8:15
子どもを学校に送り出す→家事
10:00

お仕事スタート
日によって、自宅で作業をしたり、外出仕事があったり様々。
自宅で作業をしている時は、少し早めに仕事をスタートさせて、作業の合間に家事を挟むことも。そうすることで、体をほぐしたり、リフレッシュできるのだとか。

18:00
夕飯作り→夕飯
21:00
子ども就寝
忙しい時は、子どもが寝たあと、24時くらいまで作業をすることも。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

質問1 地元松江市でも委託販売をしているそうですが、どうやって開拓されたのですか?
飛び込み営業です。自分と同じようなスタンスで作られている作家さんの作品を置いているお店や、私自身前々から好きだったお店など、「このお店に置いてもらいたい」と自分が思えるお店をリストアップし、片っ端から電話をかけました。電話の時点では必ずしもよい反応ばかりではありませんが、実物を見ていただくと、すんなり置いていただけるケースが多かったです。
質問2 値段はどうやって決めていますか?
近年ハンドメイドの垣根が下がってきていますが、私はプロとして取り組んでいます。しじみちょうは完成まで非常に手間暇がかかるので、ある程度覚悟を決めて値段設定をし、その値段に見合うまで商品のクオリティを高めるよう、日々研鑽しています。

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地元の缶詰会社や漁師さんから届いたばかりのしじみ貝。中身だけがくり抜かれたバラバラの状態で届くため、ここから、①歯ブラシでこすり洗いをし、②消毒をし、③天日干しをし、④貝合せをし、⑤ヤスリで磨くという果てしない下処理を経て、ようやく布でくるむ状態になる。高いクオリティを保つためには、どれも欠かせない作業だという。

質問3 フリーランスとして生きていく上で大切にしていることを教えてください。
ピンチの時こそ、チャンスだと考えるようにしています。やはり人生は波がありますので、「点」で考えるのではなく「線」で考える。今だけ(点)を見ていると、マイナスにしか思えないことも、後々振り返ると、あの時があったからこそ、今があるんだなということがたくさんあるんですよね。だから、ピンチの時は、この先高く飛ぶための前段階だと考えるようにしています。
質問4 それでもピンチの時はつらいと思うのですが...、実際にどのように過ごされているのでしょうか?
とにかく、「今できることをやる」それにつきるかと思います。本当に何もできないのなら、寝てもいいんです。数年後には忙しくて寝てられないかも知れません。手が痛くて何もできないのであれば、映画を見て感性を磨くでもいい。また、今日は「事務員モード」、「クリエイターモード」、「営業モード」のように、いくつかモードを持っておくのもよいかも知れません。とにかく、その時できることをやることが、次に繋がると思っています。
質問5 これからやってみたいことはありますか?
私の長男は、発達障害の二次障害を引き起こし、引きこもり生活を送っています。次男は、ギフテッドの2E児ということが判明し、現在は支援学校に通っています。正直、発達障害児を育てるのは大変です。本当はお金が必要なのに、手もかかるから、働くことを諦めているお母さん方もたくさんいらっしゃいます。そんなお母さん方が、自分の得意なことで、何かしら収入が得られるよう、お手伝いできればと思っています。自分で仕事を作り、オリジナルな人生を歩むことができるというロールモデルに、私がなりたいです

<今後の出展予定>

■くらす市〜夏のワークショップ祭り〜
「宍道湖産しじみでストラップを作ろう」

日時:2018年7月28日(土)10:00〜16:00
費用:700円
会場:くらすクラス http://www.kurasu-class.me/
   JR南武線 稲城長沼駅高架下
主催:一般社団法人いなぎくらすクラス
協力:東日本旅客鉄道株式会社八王子支社

■手手暮らし〜暑気払い@いな暮らし〜

日時:2018年8月25日(土)15:00〜20:00
会場:古民家カフェ いな暮らし http://inagurashi.com
   稲城市押立1744-46
   JR南武線「矢野口」駅より徒歩8分
主催:まんまる屋 サワキカオリ
お問い合わせ:kaori@swk623.com

釘宮 優子

Writer 釘宮 優子

広告制作会社でのカタログ・パンフレットの編集・コピーライティング、金融専門研修会社でのテキスト編集等を経て、2016年よりフリーランスの編集者・ライターに。主に、広告・企業広報界隈で、小冊子など紙媒体の編集や、インタビュー記事、広告記事の執筆に取り組む。得意分野は「マネー」&「キャリア」。興味があるテーマは「婚活」。10歳年下の夫とは、フリーランス夫婦。

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